豪州戦の失点に繋がった守田の痛恨ファウルはなぜ起きたのか? 『4-3-3』プレッシングのメリット&デメリット

2021年10月14日 清水英斗

4-3-3システム導入の狙いとは?

FKを決められ同点に追いつかれた日本。失点はオーストラリアに“急所”を突かれたことが原因だった。写真:金子拓弥 (サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 カタール・ワールドカップ・アジア最終予選、サウジアラビアに敗れてあとがなくなった日本は、ホームでオーストラリアと対戦。8分に田中碧が先制ゴールを挙げて勢いづいたものの、70分にアイディン・フルスティッチのフリーキックで同点に追いつかれ、予選突破に暗雲が立ち込める。

 しかし終了間際の86分、浅野拓磨のシュートがゴールポストに当たり、混戦のなかから最後は相手のオウンゴールで勝ち越し。辛うじて2-1で勝利し、勝点3を積むことに成功した。

 オーストラリアは丁寧なパス回しとゲームコントロールに長けたチームだったが、日本はプレーテンポの速さ、球際の俊敏性でそれを圧倒した。相手のポゼッションに振り回される場面も少なくはなかったが、ボールを巡る争いでは日本が常に優位だった。

 兵法書『孫子』には、『巧遅(こうち)は拙速(せっそく)に如かず』という言葉がある。上手だが遅いよりも、下手でも速いほうがいい、という意味だ。サッカーも時折それに当てはまることはある。オーストラリアのプレーは正確で出来が良かったが、仕上がりは遅い。逆に日本のプレーは、普段とは異なる4-3-3システムを導入したことも手伝い、出来は粗かったが、その一方で選手は速く、テンポ良くプレーし、たくさん走り回った。
 
 結果、オーストラリアは1-2で日本に如かず。暑熱のサウジアラビアから、涼しい秋の日本へ入ってコンディションが改善したことは大きく、『巧遅は拙速に如かず』が通用する試合になった。

 戦術的なポイントは、日本が繰り出した4-3-3のプレッシングだ。オーストラリアの2枚のセンターバックを、大迫勇也が1人で追うのではなく、両ウイングの伊東純也と南野拓実が縦スライドして寄せ、同数にかみ合わせてプレスをはめる。大迫は相手センターバックよりも、アンカーの10番、フルスティッチを重点的にマークしながら、南野と伊東のプレスに連動する。

 オーストラリアはアンカーが下がって最終ラインを3枚に変形するなど、ビルドアップに柔軟性を出すチームだ。日本が普段どおりに2トップで守備に立つと、3枚に変形されて数的優位を作られ、プレッシングがはまらなくなる。

 そこで大迫を1トップとし、両サイドから南野と伊東がタイミングを合わせて縦スライドし、動きのなかでプレスを当てはめるほうが、最終ラインの2枚と3枚を使い分けるオーストラリアの柔軟性に対処しやすい。おそらく、そんな狙いがあったのではないか。もちろん、ボール奪取時に両ウイングが前に残りやすく、カウンターの威力が増すメリットもある。その辺りの複合的な判断だと思う。

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