ピッチ内の戦犯探しの前に見るべき森保Jの大局。“設計力”の差がサウジ戦の結果に表われた

2021年10月09日 河治良幸

もっと根本的なところに問題を見ることができる

敵地でのサウジ戦は0-1の敗戦を喫した森保ジャパン。最終予選で3試合を終え、1勝2敗と厳しい状況にある。(C)JFA

 完全アウェーでサウジアラビアに敗れてしまった日本代表。0-1というスコアで負けている以上、直接の原因として71分の失点につながる柴崎岳のミスパス、少し視野を広げても酒井宏樹、原口元気、柴崎岳、吉田麻也とつながる右サイドの連係ミスがあげられるのは当然だろう。

 そこで一連のズレと柴崎のミスパスが、吉田の裏でアル・ブリカンがGK権田修一と1対1になる状況を生んでしまった。そこに関しては最終予選の大事な試合において言い訳は許されない。ただ、試合全体の背景を考えると、やはりもっと根本的なところに問題を見ることができるし、残りの試合を考えても建設的な指摘ができるように思う。

 結論から言うと、日本は19年アジアカップの経験を良い意味で糧にできていない。メディアも含めて今回のテーマとしてアジアカップでのサウジアラビア戦があげられていた。つまり70%以上もボールを持たれて、ほとんど自陣に張り付けになってしまった試合だ。

 もちろん、早い時間帯にセットプレーから冨安健洋が先制点を決めたことが導いた試合展開でもあったが、前からのプレスがハマらないと守備が後手に回るという問題は当時から見られた。

 そのサウジアラビア戦よりも、今回はアジア杯決勝のカタール戦に似た現象がピッチに起きていた。日本もサウジアラビアもベースは4-2-3-1だが、ロシア・ワールドカップでモロッコ代表を率いたエルベ・ルナール監督が率いるサウジアラビアは、守備で日本とミラーゲームのような状況を作りながら、攻撃の立ち位置をうまく変えることで、日本の守備をハメさせずに高い位置で起点を作ってきた。

 90分を通すとサウジアラビアが54%のボール保持率で、日本は46%だったが、それは終盤にリードされてからの挽回があった結果で、前半終了の時点ではサウジアラビアが59%だった。
 
 問題なのはその内容面で、4-4-2で構える日本は、ボランチの一枚が落ちるなど3バックを形成しながら両サイドバックを上げてくるサウジアラビアに対して、あらゆるエリアで数的有利を作られてしまっていた。

 アジア杯のサウジアラビアと今回のチームが違っていたのは距離の取り方で、2年半前のチームはボールを保持していても近い距離での横パスが多く、日本がブロックを作って構えていれば、ボールを持たれていても脅威にはなっていないように見えた。当時の試合を経験した選手たちの言動が、ボールを持たれた割に圧倒されたという印象がないのもそのためだろう。

 しかし、今回のチームは右サイドハーフのアル・ムワラド、左のガリーブが攻撃の幅を取ることで日本のサイドハーフを下げさせて、サイドバックが高い位置でボールを持つと中に流れて中央に厚みを作り出すというビジョンの共有が見られた。

 そうした攻撃に対して日本はボランチの柴崎がワイドに流れることで、サイドハーフを下げすぎないようにしていたが、中央が遠藤だけになってしまい、そこをアル・ファラジュ、さらに逆サイドのアタッカーに使われるという状況が生まれていた。
 

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