【喜熨斗勝史の欧州戦記|第6回】コロナ禍でも“サッカーを回し始めた”ヨーロッパ各国。腹の底から叫ぶサポーターには迫力が

2021年09月28日 サッカーダイジェスト編集部

ワクチン接種率の高い欧州では“ZEROコロナ”ではなく“WITHコロナ”のマインドに切り替わっている

ワールドカップ欧州予選に臨んだセルビア代表。ルクセンブルク戦とアイルランド戦に臨んだ9月は1勝1分だった。

 セルビア代表のドラガン・ストイコビッチ監督を右腕として支える日本人コーチがいる。"ピクシー"と名古屋でも共闘し、2010年のリーグ優勝に貢献した喜熨斗勝史だ。

 そんな喜熨斗氏がヨーロッパのトップレベルで感じたすべてを明かす連載「喜熨斗勝史の欧州戦記」。第6回は、コロナ禍でも「サッカーを回していく」という方向に進んでいるヨーロッパの現状について語ってもらった。
 
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 アジアもワールドカップ最終予選がスタートし、日本代表は初戦のオマーン戦で残念な結果に終わりましたね。でも吉田麻也も口にしていましたが、9月の国際Aマッチは個々のコンディションにバラつきがあったりして難しい。ワールドカップ欧州予選が再開した我々も、時間がないなかでの試合は本当に繊細なマネジメントが必要でした。

 今回、セルビア代表はハンガリーでカタールと親善試合(1日)をこなしたあと、ルクセンブルク戦(4日)と敵地でのアイルランド戦(7日)を行ないました。結果は1勝1分。首位ポルトガルとは勝点2差で残り3試合となりましたが、決して悪い状況とは思っていません。

 そもそも最終戦のポルトガル戦(11月14日)はドローでもワールドカップ出場が決まるとは思っていません。勝たないといけないと考えていますし、その意味で現状はよりターゲットが明確になったと思います。勝利だけにフォーカスできますし、来月の敵地でのルクセンブルク戦(10月9日)、アゼルバイジャン戦(同12日)に連勝してリスボンに乗り込むだけです。

 9月の代表活動でひとつイレギュラーがあったのは、すでに報道もされていますが、アンドリヤ・ジヴコヴィッチ(PAOK)が新型コロナで陽性判定を受けたことによる離脱です。カタール戦後に帰国して、そこで判明。合宿合流前のPCR検査では陰性で、移動もチャーター機でした。さらにバブル(一般社会との隔離)の中で生活していましたし、どこで感染したのか分かりません。濃厚接触者もいたので、我々も毎日PCR検査を受けました。

 でもパニックになることはありませんでしたね。HOPE FOR THE BEST AND PREPARE FOR THE WORST.(最善を目指して最悪に備える)。ワクチン接種率の高い欧州では"ZEROコロナ"ではなく"WITHコロナ"のマインドに切り替わっています。何よりも『サッカーを回していく』という方向に進んでいます。文化としてサッカーが根付いている欧州では、かつての日常を取り戻すことで、サッカーのクオリティを落としたくない、より進化させたい思いが強いのだと感じます。

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