FIFAが推し進める“W杯隔年開催”は是か非か――。仏有名誌編集長に訊いた。「ヴェンゲルよ、理性を取り戻してくれ」【現地発】

2021年09月28日 レミー・ラコンブ(フランス・フットボール誌編集長)

FIFAの財政的意図については、ひと言も言及していない

ヴェンゲルの提唱するW杯の隔年開催案を巡っては、世界中で賛否両論が巻き起こっている。(C)Getty Images

 アーセン・ヴェンゲルはアーセナルで22年間も過ごした立派な御仁だが、まるで早くも全てを忘れてしまったか、または全てを否定しまったかのような印象を醸し出している。
 
 監督時代ヴェンゲルは、「自分の選手たちを疲労困憊させる」と主張してひっきりなしに代表チームに文句をつけ、「選手たちの給料を払っているのはクラブだ」と再三強調していたものだった。

 ところが国際サッカー連盟(FIFA)でワールドフットボール発展部門の責任者になった彼は今、手の平を返したように、ワールドカップ(W杯)を2年に1回開催するという突飛な案を掲げている。「2年おきというこのニュー・バージョンなら、観衆の期待と要望に応えるうえ、プレーの質も選手たちの質も向上させることになる」、としきりに請け合っているのである。
 
 一方で、ヴェンゲルは、FIFAの財政的意図については、ひと言も言及していない。W杯のほとんど全ての収入はFIFAの懐に入るのであり、4年おきから隔年開催になれば、当然ながら儲けも倍となるわけだ。
 
 FIFAのジャンニ・インファンティーノ会長の政治戦略についても、ヴェンゲルは一切言及していない。「小国」もこの一大イベントに参加しやくなる、と説くことで、インファンティーノは次期FIFA会長選挙での再選に向け、票を稼ぎたいのである。

 それだけではない。とりわけヴェンゲルは、隔年開催が選手たちの健康状態にもたらす影響についても、無言を貫いている。

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