ひとり歩きした3000億円――新国立競技場の建設計画が迷走している理由

2015年06月19日 石田英恒

建設費の予想以上の上昇が混乱の引き金に。

昨夏に予定されていた解体工事は、今年に入ってからようやく着手。57年の歴史に幕が閉じられた。(C)Getty Images

 2020年東京オリンピックのメインスタジアムとなる新国立競技場の工期と費用の問題が再浮上している。
 
 現状のままでは工事が本番に間に合わないことが明らかになり、スタジアム建設計画の見直しが行なわれ、デザインの再検討もされているという。
 
 問題山積の新国立競技場建設工事の現状と見通しは、果たしてどうなっているのか――。
 
 下村博文文部科学大臣と舛添要一東京都知事の会談で、下村文科相は新国立競技場の建設費として、政府として東京都に500億円の負担を求めた。また、2020年のオリンピックまでには開閉式屋根の工事が間に合わないこと、座席数8万人の一部を仮設とすることを明らかにし、新国立競技場の建設が予定通りに進んでいないことが判明した。
 
 問題山積の新国立競技場建設工事について、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会実施本部長代理の遠藤利明衆議院議員は、次のように現状を語った。
 
「現状は建設資材が高騰し、日本中の建設中の建物の建築費が5割増しぐらいの状況になっています。また、資材とともに人件費も高騰し、工事に関わる人材を確保することが難しくなっています。
 
 必要な技術者が揃わなければ、工事を進めることができなくなります。人材が揃わないことで、工期の問題が出てきているのです。これまでなら、工事の遅れがあったとしても突貫工事でなんとかなりましたが、今はそういうこともできない状況です」
 
 建設費が予想外に上昇してしまったのが、今回の混乱を引き起した大きな要因のひとつだった。
 
 建設業界関係者によると、「建築費高騰の最大の原因は、東日本大震災からの復興の過程で生じている資材と人材の不足と、それによる資材価格、人件費の上昇。それに、元々あった建設業界における技能労働者の不足傾向、円安、景気回復の動き、消費税のアップもひとつの要因になっている」という。
 
 建設費と工期の問題によって、開閉式屋根は2020年オリンピック後に設置されることになった。また、可動式の観客席はすべて仮設スタンドに改められ、同大会後に仮設スタンドを取り外すことになったのだ。
 
 遠藤議員は、競技場建設計画の見直しについて次のような見解を述べる。
 
「大事な点は、新国立競技場は、2020年オリンピックの1年前のラグビー・ワールドカップ(2019年9~10月)の主会場になっていること。ラグビー・ワールドカップの本番前に、試用期間を設けてテストも必要なので、2019年3月頃までには新国立競技場を完成しなければならないということです。
 
 そのために今、責任者である文部科学大臣の下で、工期と費用を検討しています。もし、開閉式屋根を付けるのに工期が間に合わないのであれば、開閉式屋根の工事がオリンピック後になるのもやむを得ないというのが現状なのです」

次ページ3000億円という数字がひとり歩きし、反対運動が勃発。

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