「翼DREAM」地元・葛飾と“リアル南葛SC”の未来――元Jリーガーの社員選手たちが子どもたちに語ること

2021年08月31日 伊藤 亮

教えるのはチームとして動くことの大切さ――リアル南葛SCの地域貢献活動【後編】

「翼DREAM」の教室での授業の様子。社員選手の石井が担当する。写真提供:南葛SC

 現在、南葛SCには5名の社員選手がいる。

 今は激戦の関東リーグ2部を戦いながら、平日はスポンサー営業やグッズ開発など、多岐にわたる業務を忙しくこなしている。

 その中で大切な業務のひとつ、「翼DREAM」を担当しているのが楠神順平と石井謙伍、そして佐々木竜太だ。3名ともJリーグで活躍してきた華麗な実績を持つ。

 今回は実技担当として楠神順平、座学担当として石井謙伍に具体的に教えている内容ややりがいについて話を聞いた。

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 楠神順平は、2020年に南葛SCに加入する前のシーズンまでは、J1の清水エスパルスでプレーでしていた。

「プロの時は極端な話、自分さえよければいいといいますか。自分がのし上がって活躍することが第一だったのはあります。これはプロとして大事な心構えではあるんですけど、今もその気持ちは持ちつつ、ほかにも地域貢献であったり、パートナー様であったり、チームを取り巻く環境など、自分というよりチームがどう向上していくかを常に考えるようになりました」

 チームの知名度を上げるために、それまでは関心の薄かったSNSの更新も頻繁にするようになった。考えること、やることは増えたが「そのぶん今まで以上にやりがいを感じている」という。翼DREAMも新たなやりがいを感じた仕事のひとつだ。

「セレッソ大阪にいた時なども、サッカー教室で子どもたちと触れ合うことは何度もありました。ただ学校に赴いたり、サッカーをしていない子たちに教えたりするのは、『翼DREAM』が初めてで。昨年からですけど、実際に教えてみて、みんな本当にかわいいんです。男子が頑張るのは想像がついたんですけど、女子もすごく積極的に取り組んでくれるのは意外だったといいますか。小学校高学年の女の子など、もう少しませているイメージだったので(笑)」

 とはいえ、初対面の時は互いに遠慮がちになる。まず自己紹介のところでつかみにかかるというが…。

「佐々木は『ササキングって呼んでください!』って自己紹介するんです。僕は『ジュンジュン』。でも最初は、まだ場が温まってないので反応はややウケ程度で(笑)。最初はクスクス笑われるくらいの反応なんですが、最後の方にはみんなその名前で呼んでくれるようになるんですよ」

 大切にしているのは距離感。専門的なサッカーを教えるというより楽しんでもらうことを第一としている。
「自己紹介の後にウォーミングアップをして、ボールを使ったゲームをします。『だるまさんがころんだ』の変形バージョンで、僕らがボールを空中に上げている時だけ移動していいという。"一人でも失敗したら全員がスタートに戻る""最初にゴールしたら残り3回以内に全員がゴールしなければならない"というルールで。僕らもボールを上げる際にフェイントをかけたり、まっさきに一人だけゴールしてもみんなが困ったり。なかなか難しいのでみんなで作戦会議をするんですけど、ここらあたりから場が盛り上がってきて楽しそうに取り組んでくれます。それで最後にゲーム形式のサッカーをやって終了、という流れです」

 教えたいのはチーム、団体として動くことの大切さだ。
「うまくいかない時にみんなで積極的に意見を出し合って、話し合う姿を見ているのが楽しいんです」
 

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