「サッカーがメンタルスポーツである、と改めて認識した6試合」。反町技術委員長が東京オリンピックを総括

2021年08月20日 増島みどり(スポーツライター)

中2日の過密日程、猛暑、延長戦でも、メダルに向かって加速した3か国と日本の差

東京オリンピックでの戦いを俯瞰的に捉えた反町技術委員長。実に興味深いインタビュー内容になっている。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 東京オリンピックの余韻に浸る間もなく、9月2日からは、22年W杯カタール大会アジア最終予選がホーム(吹田、対オマーン)でスタートする。U-24日本代表の活動が終了し、森保一監督(52歳)が掲げた「1チーム2カテゴリー」は、五輪の課題、収穫を十分に活かした「ワンチーム」の真価を問われることになる。期間中、団長を務めた反町康治技術委員長(57歳)に訊く。

──五輪の総括と、最終予選の準備が重なり慌ただしいのでは。

反町 先ずは、森保監督と、横内コーチ(昭展=53歳)には、1週間完全休養を取ってもらい、最終予選の代表招集に関するレターなどの手続きを進めて来た。8月中には、技術委員会としての五輪の総括レポートをあげる。監督は、コロナ禍で非常に難しい状況でも、コーチングスタッフへそれぞれのテーマを分担し、医療スタッフ、サポートスタッフ、チーム全体が最後まで一致団結した統一感を持てるよう陣頭指揮を執ってくれた。

──5人の交代枠やエントリーの拡充(18人から22人)、また、選手村には入らない調整で、地の利を活かせたと考えますか。

反町 選手それぞれに背景があり、監督がそれを一番理解したうえで起用している。ケガ、体調面の不安、疲労、選手の精神状態、それら全てを把握して、この特殊な短期決戦(中2日での6試合)で起用するのは、周囲が思うような駒の代え方ではなく、非常に難しい面が多かった。私も(監督として)北京五輪でも経験している。起用やその考え方については、私の個人的な感想や見解も含めて、もちろん監督にじっくり話を聞いて総括したい。千葉の拠点(夢フィールド)を使ったのは、選手村には入るスタッフが限られてしまうからでもあった。今回は疲労の回復を重要視し、医療スタッフに動いてもらうためにこうした体制を取った。ホームの利点は活かしたと思う。
 

──メキシコを相手にした因縁を思わせる銅メダルマッチに敗れ、12年のロンドンと同じ4強でした。

反町 6試合への万全な準備をしたが、同じ中2日のハードスケジュール、猛暑の中で、メダルを獲得した国と自分たちの違いはどこにあったのか。これは五輪からW杯に向かって、検証すべき重要な点だ。日本は、2勝してもグループリーグ突破が決まらない、非常に厳しい組をメキシコと勝ち上がり、自分たちの力は出し切った。しかし例えばブラジル、スペインは層の厚さとともに、トーナメントに入って我々と同じように延長やPK戦で苦しみながらも、さらにフィジカル、メンタルをメダル獲得に向けてフルスロット(加速)して行く。最終予選などの長期間、場所を移動しての試合方式とは全く違う五輪で、こうした底力を備えたコンディションをもっとトータルで考えるべき課題だ。
 

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