命運を分けたPK献上の背景。メキシコに狙い撃ちされた日本の強み【東京五輪】

2021年08月08日 河治良幸

ベガは縦に行くと見せかけてインにドリブルし――

命運を分けた13分のPK。その後リスタートから2失点。三笘が一矢報いるも、1-3でメキシコに敗れ、悲願の銅メダル獲得はならなかった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

[東京五輪 3位決定戦]U-24日本 1-3 U-24メキシコ/8月6日/埼玉スタジアム2002

 日本とメキシコの命運を大きく分けることになった13分のPK。遠藤航が相手を倒した位置は微妙だった。しかし、日本がメキシコの攻撃時に後手を踏んだ結果でもあった。そこには2つの理由が存在すると考える。

 PKにいたる11分の流れを振り返りたい。ボールを持つ側だった日本は吉田麻也、酒井宏樹、久保建英、堂安律と細かく繋ぐが、右サイドのほぼ中央で、メキシコの4人がかりのタイトなプレスの前にうまく運べず、酒井が2列目の二人を追い越した直後、堂安と久保の呼吸がずれたところを狙われてボールを失う。

 メキシコはセバスティアン・コルドバがボールを持って前を向くが、そこに遠藤が立ちはだかった。単純な1対1なら"デュエル王"遠藤には何の問題もないはずのシーンだったが、メキシコはオーバーエイジのエンリ・マルティンが絶妙なポジショニングで縦パスを呼ぶ。コルドバのパスからノートラップで前を向いたマルティンの進撃に対して、吉田と冨安健洋のCBコンビは下がりながらのディフェンスを強いられた。
 
 なんとか危険なスペースを埋めに行こうとしたのは遠藤の相棒である田中碧だ。そしてマルティンを左から追い越すコルドバを遠藤が吉田とともに封じに行く。これでマルティンとコルドバのパスルートは封じた。だが、マルティンは日本の対応を見透かしたように、さらに外側を走るアレクシス・ベガにサイドパスを通したのだ。

 日本にとって不幸中の幸いだったのは、マルティンのパスが少し遅く、遠藤と自陣の守備に戻ってきた久保の二人でベガのコースを阻む時間をもらえたことだ。しかしながらメキシコはベガ以外の4人がアタッキングサードまで進出してきており、田中、吉田、冨安、左サイドの中山雄太と4対4になっていたのだ。

 ここで遠藤と久保の二人がベガからボールを奪い切れば問題なかったが、二人と後方の吉田、田中との距離が空いており、突破されると非常に危険な状況だった。ここでベガは縦に久保を振り切って事実上の遠藤との1対1に持ち込むと、そのまま縦に行くと見せかけてインにドリブルする。それに対してマルティンが顔を出して受け手になろうとするが、ベガは遠藤のショルダーチャージを振り切ってペナルティエリア方向へ。慌てて反転した遠藤はベガを倒してしまった。

【五輪代表PHOTO】U-24日本 1-3 U-24メキシコ|三笘が反撃の1点を返すも追加点が遠くメキシコに敗戦 53年ぶりのメダル獲得とはならず...
 

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