「選手村は夢のよう」日本を破った“ラ・ロヒータ”が集大成の大一番に挑む【U-24スペイン代表の東京五輪滞在記2】

2021年08月07日 セルヒオ・サントス

「移動にイライラすることもあった」

アセンシオ(右端)の劇的ゴールで日本を破り、ブラジルとの決勝に駒を進めたスペイン。写真:JMPA代表撮影

 ここ数日、U-24スペイン代表の選手たちの表情がすこぶる明るい。U-24日本代表を下し、決勝にコマを進めたのだから当然だろう。

 しかしここまでの道のりは長く険しいものだった。ルイス・デ・ラ・フエンテ監督は実感を込めてこう振り返る。

「極めて難しい環境下に置かれた中での大会だった。選手たちにとっては困難の連続だった。特に最初の10日間のホテルでの生活はとても厳しいものだった。ホテルと練習場の往復の繰り返しだった。グラン・エルマーノ(スペイン版リアリティ番組)のようだったよ。いい意味でね。特筆すべきは、そんな共同生活の中でトラブルが一度起こらなかったことだ。信じられないことだ。われわれは本当の家族のようだ」。

 ダニ・オルモも同調する。「一番きつかったのは移動だ。練習場に移動するだけでも、長時間待たされることが少なくなかった。イライラすることもあったよ。一体いつになったら休息できるんだという心境だった。スポーツ選手にとって決まった時間に休息するのはとても大切なことだ。でもこの大会はそれがなかなかできなかった」

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 そんな彼らにとって気分転換となったのが選手村での生活だ。「ホテルに缶詰めにされる生活から解放され、まるでハリウッドにいるようだった」とデ・ラ・フエンテ監督が上機嫌に語れば、ダニ・オルモは「まるで夢のような日々だった。他の競技の選手たちと一緒に生活し、自分たちもオリンピックに参加しているメンバーの一員なんだという意識が高まった」と顔を紅潮させる。

 もっともダニ・セバジョスは難しい面もあったことを認める。「食堂に行くと長蛇の列で待たされることもあった。各種目の競技時間が異なるから、寝ようと思ったら、部屋の外から物音が聞こえることもね。正直なかなか休めなかった。でもそうしたことを除けば、とても貴重な経験になった」

 しかし選手たちはすでに五輪村を一時的に離れ、ブラジル戦に備え、試合会場のある横浜市内のホテルに滞在している。大半の者にとってキャリアの中で最も重要な試合であり、コンディションを整えながら、ライバルの対策にも余念がない。
 

次ページ指揮官は「選手たちにはこれが終着点なんだということを繰り返し伝えてきた」

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