勝敗を分けたのは“セットプレー”――市川大祐が見たスペイン戦。3位決定戦へ向け日本が得たモノは…【東京五輪】

2021年08月05日 サッカーダイジェストWeb編集部

スペインは守備への反応が速く、意識が高かった

市川氏も称賛するスペインの守備。1対1の強さも際立っていた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 スペイン戦は延長まで粘りましたが、最後はマルコ・アセンシオ選手に決められ0-1で敗戦。結果は残念でした。

 日本にもチャンスが無かったワケではないですが、スペインがしっかりとプレーしたという印象のゲームです。

 スペインに対して日本は、試合前から自分たちが守る時間が長くなると想定して、我慢強く戦うという決意をもって入った試合だったと思います。

 相手陣内の守備でも林大地選手を先頭にプレッシャーをかけようという意識はあったのですが、スペインにGKを上手く使ったビルドアップで局面を変えられてしまい、なかなか高い位置からの守備でボールを奪うことはできず、コースも限定し切れなかった。

 そういう上手さのある相手に、日本は自陣まで全体が戻って、ポジションをとりながら、スペースを与えないように、チーム全体で今までやってきた統一感のある守備をして、奪ったボールから素早くカウンターを仕掛けたり、個での持ち運びなども行ない、ロングボールで狙うシーンもありました。
 
 一方で、スペインサッカーと言うと華麗なポジショナルサッカーが強調されますが、守備への反応が速く、意識が高かった。そして1対1の守備も強度が高く的確でした。

 自分たちでボールを繋ぎながらも、ボールを奪われた瞬間の守備のバランスは決して悪くない。自分たちでポゼッションだけしているようなチームなら、奪われた瞬間の守備の意識も薄れますし、リスクマネジメントが出来ていない状況も多いですが、スペインは違った。

 ボールを失った瞬間のアプローチの速さ、ファーストディフェンダーの決定が早くて、それに対して周りも反応する。ペナルティエリア内でもしっかりと身体を張れる、そういう勝負強さがある守備をしていました。

 守備の局面は我慢比べです。いかに攻撃は相手の想定外を作るかが大事で、守備はいかに想定内にしていけるかという駆け引きになります。スペインはその状況を予測して正しく守れるシーンが多かった。そういう予測ができるのは、ラ・リーガをはじめ欧州の最前線での経験がある選手が多いということもあるとは思います。

 一方で、中2日で5戦目という疲れの影響も見えました。

 スペインは繋いではいるのですが、最後のゴール前での迫力とか、質は試合を通してなかなか上がらなかったように感じます。そこまでの繋ぎは、日本代表がしっかりとポジションをとっているなかでも、間でボールを引き出す動きも巧みでしたし、中盤の田中碧選手や遠藤航選手の背中からボールを引き出すという形での上手さはありました。真ん中に集めておいてペドリ選手がサイドに振る配球が効果的でした。しかし、最後のフィニッシュの迫力や質では、上手さはあったけど、怖さはそこまでなかったと思います。
 

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