【スペインメディアの論調まとめ】三冠を達成したバルサに寄せられる様々な称賛の声

2015年06月07日 下村正幸

臨機応変、変幻自在!“ニューバージョン”のメッシの真骨頂。

プレーの領域が広がり、さらに影響度を増した大エース、メッシ。過去のCL決勝とは少し異なる形の貢献ぶりを見せた。 (C) Getty Images

 バルセロナはフットボール史上初の2度目のトリプレーテ(三冠)達成を懸け、準決勝で宿敵のレアル・マドリーを下してスペイン人ファンが待望していたクラシコ・ファイナルの実現を阻んだユベントスと相まみえた。
 
 戦前は、「絶好調のバルサにとって最悪のライバル」と予想していた『エル・パイス』紙のラモン・ベサ記者に代表されるように、バルサ優位という意見が大半を占めるなかにも、イタリアのチーム特有の老獪さを警戒する声も少なくなかった。
 
 そして試合はその下馬評通りに、バルサが開始早々に幸先良く先制し、それ以降も押し気味に試合を進めながら、しかし最後まで勝敗の行方が分からない熱戦となった。
 
 その要因を、バルサOBで、スペイン人として唯一バロンドールを受賞(1960年)したルイス・スアレスは、「先制後に得たチャンスをことごとくモノにできなかった。選手たちが余裕を持ちすぎて、ゴールへの執着心が足りなかったからだ」と分析する。
 
 確かに、リードを広げられなかったことが後半に入ってからのユーベの反撃を招き、同点を許す結果となった。
 
 しかし、コントロールを失ってオープンな打ち合いになった試合展開のなかで、スアレスが評価した「個の力」で勝利を手繰り寄せたことは、リオネル・メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの前線3トップの決定力を前面に押し出す戦いを見せた今シーズンのバルサを象徴するものだった。
 
 その2得点がいずれもカウンターからのゴールと言うのが何よりの裏付けであり、さらにバルサらしい華麗なパスワークから生まれた先制ゴールについても、起点となったのは右サイドにポジションを戻したメッシで、専売特許となっている彼の正確無比なダイアゴナルのパスから生まれた。
 
 そのメッシについては、アルフレッド・ディ・ステファノに続く、チャンピオンズ・リーグ決勝3試合での得点という記録を達成できなかったこともあり、「平均以下のパフォーマンスだった」と論じた『AS』のアルフレッド・レラーニョ編集長のような低評価の意見もあった。
 
 とはいえ1点目に続いて、分かっていても止められないドリブルからの鋭いシュートという十八番のプレーが相手GKジャンルイジ・ブッフォンのパンチングを誘い、ルイス・スアレスの2点目を呼び込むなど、勝負どころでしっかりエースの重責は果たした。
 
 そのパフォーマンスを、『エル・パイス』のジョルディ・キシャーノ記者は以下のように評価している。
 
「アメフトのクオーターバックよろしく、サイドチェンジを多用してチャンスメーカーに徹した前半から、ドリブルを駆使して前線で攻撃をリードした後半と、ゲーム展開に応じてインサイドハーフ、ボランチ、ゲームメーカーと、役割やポジションを臨機応変に変えながら自在にプレーする、"ニューバージョン"のメッシの真骨頂が発揮された」

【ゲームPHOTOギャラリー】バルサ3-1ユーベ

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