「ミランに切り捨てられ、ユーベに振られて…」ドンナルンマ移籍の舞台裏を移籍専門記者が明かす

2021年07月19日 片野道郎

「もしパラティチがユベントスに残っていれば…」

昨シーズン後半戦のミランではキャプテンマークも巻いたドンナルンマだが、今夏にPSGへと旅立った。(C)Getty Images

 イタリア代表GKのジャンルイジ・ドンナルンマは7月14日、以前から噂されていた通りPSG(パリ・サンジェルマン)への移籍が正式発表された。ミランとの契約は6月30日をもって満了していたので、移籍金ゼロのフリートランスファーだった。
 
 EURO2020では大会MVPに輝く活躍でアッズーリを欧州王者に導いた22歳の守護神は、どんな経緯でミランからPSGへと移ったのか。まだ移籍が正式アナウンスされる前だったが、『Sky Italia』の移籍専門記者であるジャンルカ・ディ・マルツィオ氏は『ワールドサッカーダイジェスト』2021年7月1日号でその舞台裏を語っていた。その片野道郎氏によるインタビューの一部分を公開する。
 
片野氏:ユベントスへ2年ぶりに復帰したマッシミリアーノ・アッレーグリ監督は強化に関して、以前より大きな権限を持っていると言われています。この話は本当ですか?
 
ディ・マルツィオ記者:もちろんさ。ユベントスへの復帰を受け入れたのも、強化についても大きな発言力を持ち、イングランド式のマネジャーに近い形でチームに携わることを約束されたからだ。ファビオ・パラティチ(ユベントスを去りトッテナムの強化責任者に転身)の後任として強化責任者に昇格するフェデリコ・ケルビーニとの関係も、かなり良好だ。ケルビーニはスカウトというよりはゼネラルディレクターに近いタイプだから、移籍交渉では手腕を発揮するが、新戦力の絞り込みはアッレーグリや配下のスカウティング部門に多くを委ねることになるだろう。
 
片野氏:一時は有力視されたドンナルンマの獲得がなくなったのも、アッレーグリの意向ですか?
 
ディ・マルツィオ記者:そうだよ。もしパラティチが残っていれば、ドンナルンマは間違いなくユベントスに行っただろうね。パラティチは論理よりも、ファンタジア(創造性)や話題性を大事にするタイプだ。3年前にロナウドの獲得にすごく積極的だったのも、世間に与えるインパクトの大きさが一番の理由だった。それと比べるとケルビーニ、そしてアッレーグリは、より現実的で論理的だ。「我々には世界でもトップ10に入るキーパーであるシュチェスニーがいるのに、どうしてわざわざドンナルンマを獲る必要がある?」というのが彼らの考え方だった。
 
片野氏:つまり、ユベントスはドンナルンマが獲れる状況にあったにもかかわらず、あえて手を引いたということですか?
 
ディ・マルツィオ記者:その通り。ドンナルンマの代理人であるライオラは、クラブが直面している財政難に対応して、要求していた1200万ユーロの年俸を、最初の2年間は900万ユーロなり1000万ユーロに減らし、その差額分を後の3年間に回して受け取る形にしてもいい、という妥協案も提示していた。しかしユベントスは、それに対しても「ノー」を突き付けた。つまり、新体制のユベントスはドンナルンマ獲得にまったく乗り気ではなかったということだ。こうしてドンナルンマとライオラはユーロ開幕を目前に控えた状況で、ユベントスに断られ、バルサも内部で意見が一致せずに手を引き(スポーツディレクターのラモン・プラネスは積極的、フットボールディレクターのマテウ・アレマニーは消極的だった)、納得できる唯一のオファーがPSGだけ、という状況に追い込まれてしまった。
 

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