【CL決勝プレビュー】現役イタリア人監督が考察「バルサ攻略法」 ユーベが勝つとすれば“イタリア的”な勝利になるはずだ

2015年06月04日 ロベルト・ロッシ

ビルドアップを試みるのは、バルサの術中にはまりに行くようなもの。

最終ラインを押し上げてのハイプレスは、ユーベにとって愚の骨頂。後方にスペースを残すことは、メッシやネイマールに爆発的なカウンターのための舞台をお膳立てすることと同義だ。 (C) Getty Images

 このCL決勝におけるユベントスの立場は、典型的なアンダードッグのそれだ。
 
 戦力的にも、ここまでの戦いぶりから見ても、バルセロナが圧倒的に有利なことは誰の目にも明らか。マッシミリアーノ・アッレグリ監督やジャンルイジ・ブッフォンをはじめ、ユーベ側もそれをはっきりと認識している。
 
 しかし、一発勝負の決勝戦ではどんな結果も起こり得るし、起こし得る。勝ち目が薄いのは確かであっても、決して皆無というわけではない。それが彼らのスタンスだ。
 
 では、ユーベが勝利をつかむためにはどんな戦い方をすればいいのか。最も簡単に言えば、「チームの重心を低く保っての堅守速攻」、ということになる。
 
 ユーベは、強豪に挑む格下のチームが採るような、謙虚で自己犠牲の精神に富んだ戦い方に徹するべきだ。
 
 準決勝のレアル・マドリー戦でも一部の時間帯で見せたような、最終ラインからパスをつないで攻撃を組み立て、ポゼッションでチーム全体を押し上げて敵陣で戦おうというアプローチは、きっぱりと捨てた方がいい。
 
 マドリーは前線からのハイプレスが甘かったのでそれでも通用したが、バルサはハイプレスの機能性において、バイエルン、アトレティコ・マドリーと並んで世界でもトップレベルにある。
 
 バルサと互角に戦おうとして後方からのビルドアップを試みるのは、わざわざこちらから敵の術中にはまりに行くようなものだ。
 
 さらに言えば、最終ラインを高く押し上げてのハイプレスは愚の骨頂。後方に30~40メートルのスペースを残すというのは、リオネル・メッシやネイマールに爆発的なカウンターアタックのための舞台をお膳立てすることと同義なのだから。
 
 一旦スペースを与えた後に彼らを止める術は、世界最高のディフェンダーも持ち合わせていない。裏のスペースを決して与えないこと。それが守備において最も重要なコンセプトのひとつだ。
 
 逆に、マドリー戦の大半の時間帯で見せた、自陣の低い位置にコンパクトな守備ブロックを構築してスペースを潰し、ロングカウンターでの逆襲を狙う戦い方は、バルサに対してより有効だ。
 
 最終ラインの背後はもちろん、ブロックの内部にもスペースを与えないことで、2ライン(MFとDF)間に入り込んでのプレー(縦のボールの出し入れ)をさせず、横パスによる無益なポゼッションを強いて、そこでボールを奪ってカウンターに転じる。
 
 ユーベはアルバロ・モラタ、カルロス・テベスという長い距離を走って違いを作り出せるアタッカーを擁している。彼らの持ち味を引き出し、バルサの守備陣を困難に陥れる上でも、ロングカウンターは最も有効な攻め手だ。
 
 チーム全体を高く押し上げ、敵陣でボールを支配して戦うバルサの最大の弱点は、高く押し上げた最終ラインの背後に広がるスペースにこそあるのだから。

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