強化試合の相手は“格下”ばかりのなでしこジャパンに不安はないのか? 6月シリーズを再現できれば――

2021年07月12日 西森彰

強度の強い対戦相手を求め、男子高校生らと練習試合

東京五輪でメダル獲得を目指す、なでしこジャパン。本番に向け、順調に準備を進めている。(C)JFA

 今年に入って、国際試合を再開したなでしこジャパンは、4月シリーズでパラグアイ(47位/順位は対戦当時、以下同)、パナマ(59位)、6月シリーズでウクライナ(31位)、メキシコ(28位)と、FIFA女子ランキングで日本(10~11位)より下位の国ばかりと対戦してきた。

 前回の女子ワールドカップ優勝国アメリカ(1位)は、2月にカナダ(8位)、ブラジル(8位)などと、4月には欧州遠征でスウェーデン(5位)、フランス(3位)と対戦している。新型コロナ蔓延防止の国策もあって、こうした遠征が行なえない高倉麻子監督のチームは、強度の強い対戦相手を求め、各合宿で男子高校生らと合同トレーニングや練習試合を組んできた。

 対戦相手の協力で、チームの課題に取り組めた。7月の八千代高校戦では「試合の最初から、前から来てもらうように」リクエストを行なった。序盤は、4バックが相手の前線と同数の関係を作られ、一方的な防戦を強いられた。それでも選手同士で話し合いながらポジションを微調整。「自分たちサイドバックが外に開いて、そこにできたセンターバックとの間のスペースにボランチが落ちる」(清水梨紗)ことで、最終ラインでの数的優位を担保し、20分過ぎからの反撃へつなげている。

 単純なスピードやフィジカル能力という部分では、男子高校生は、女子の列強以上。強豪国を相手にしても「体格差は男子よりは小さいし、もう少し競れる。スピードも男子よりは少し遅いと思う」(山下杏也加)。より負荷がかかる試合を繰り返すことで、"強豪相手との対戦不足"は致命傷になりそうもない。
 
 真夏日で動けなくなったウクライナはともかく、メキシコ(相手に長距離移動の不利はあったが、日本も移動を含む中2日でのゲームだった)は、骨のある相手だった。そのメキシコに5-1、ウクライナには8-0のスコアは優秀。その後、アメリカもメキシコと2連戦を消化したが、そこまでの得点はできていない。

 酷暑をものともせず、攻守に積極的な仕掛けを見せ、自分たちのペースで試合をコントロールする。そして個の力だけでなく、連動した攻撃でゴールを奪う。ウクライナ、メキシコと対戦した6月シリーズの戦いが再現できれば本大会でもメダル争いは十分に期待できる。
 

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