田中碧が選んだ独2部からのスタート… 欧州で這い上がれる日本人選手とそうでない選手の分岐点とは?

2021年07月09日 加部 究

【識者コラム】25歳で浦和からシント=トロイデンに移籍した遠藤は、ボランチに転向して代表に不可欠な存在に

田中(左上)は今夏から欧州組の仲間入りを果たす。遠藤は移籍後、顕著な活躍を見せ代表のレギュラーに定着し、岡崎も献身的な姿勢でチームに欠かせない選手に。スペインで3年目を迎える久保にもさらなる飛躍を期待したい。(C) Getty Images

 U-24日本代表として東京五輪に挑むMF田中碧が川崎フロンターレから欧州へ移籍する。新天地は、ドイツ2部のフォルトゥナ・デュッセルドルフだ。欧州へのファーストステップとして、下部リーグを経由した日本人選手は少なくないが、順調にステップアップできた選手ばかりとは限らない。過去の事例を紐解き、その成否の分岐点を探る。

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 稲本潤一のアーセナル移籍などを皮切りに、数々の日本人選手たちの欧州進出を先駆的に手がけて来たFIFA代理人の田邊伸明氏は言う。

「率直に今J1で活躍している選手なら、誰でも欧州のそれなりのリーグでレギュラーを勝ち取る能力を備えていると見ています」

 J1のレベルを、他国リーグと比較するのは難しい。ただし田邊氏の言葉を参考にしても、欧州でも五大リーグ(イングランド、スペイン、イタリア、ドイツ、フランス)以外に、全ての面で確実に見上げるような質を備えた国は少ないと考えていいだろう。

 それでも日本の選手たちの欧州進出が加速しているのは、Jとは夢の広がり方が段違いだからだ。単純にベルギーと日本のリーグに大差はなくても、欧州市場に身を転じることで可能性は倍増する。今では世界中どこでも選手のプレー映像は手に入るが、やはり実際に見るインパクトとは異なるし、同大陸内でのパフォーマンスの方が信頼に足る。

 また選手たちには、ワールドカップという夢の舞台がある。そして世界と戦う代表監督も、同等の能力なら当然欧州組を優先する。今回6月シリーズは、東京五輪の準備があり1チーム2カテゴリーの選手たちが集結し多くのJリーガーが日の丸をつけたが、やはり今後はJからフィールドプレーヤーの代表レギュラーが生まれて来る可能性は少ない。逆に欧州へ渡りボランチに転向してブンデスリーガのデュエル王になった遠藤航は、日本代表でも不可欠の存在になった。

 遠藤が浦和からシント=トロイデンに移籍したのが25歳。ラストチャンスに近い年齢で、しかもポジションを変えたのだから大きな賭けだった。成功してブンデスリーガ2部のシュツッツガルトにレンタル移籍したわけだが、合流が遅れたことから3か月間近くは出場機会を得られていない。その後チームの牽引車となり、1部昇格を果たしてからの快進撃は今更言挙げするまでもないが、むしろ途中までは剣が峰の状態が続いた。

 過去にも細貝萌が似たような足跡を辿っている。23歳で浦和からレバークーゼンへ移籍し、そのまま2部のアウグスブルグへ貸し出され昇格を果たす。やがて日本代表監督にはハビエル・アギーレ就任し、MFの中核として重用された。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が長澤和輝や井手口陽介を好んだのと共通しているかもしれない。

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