【FC東京】代表定着への鍵は“二刀流”。小川諒也は大分戦で進化を示せるか

2021年06月23日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

状況判断の早さがキーファクターに

大分戦ではどんな活躍を披露するのか。小川の判断、プレーの選択に注目したい。写真:田中研治

 2021年6月27日に味の素スタジアムで行なわれる大分戦(J1リーグ第20節)は、小川諒也の進化した姿を目撃できる試合になるかもしれない。

 3月に続き5、6月の代表活動にも参加した24歳の左サイドバックは、自身のサッカー人生においてひとつ大きな局面に差し掛かっている。クラブとはまた違う刺激を代表活動で得られれば新たなモチベーションにつながり、その刺激はまた選手としても人間としても成長を促す原動力ともなり得るだけに、飛躍へのきっかけを掴めたかという点での大きな局面だ。

 今回の代表活動を終えた当の小川もこう話している。

「より高いレベルでプレーできるので、ものすごくスピード感があります。海外組と一緒にやれるのも良い経験で、彼らからはいろんな話も聞けた。そういう環境で日々トレーニングできたのは良い刺激になりました」

 スピード感を求められたのが状況判断の部分だ。

「今回出場させてもらった4試合(相手はU-24代表、タジキスタン、セルビア、キルギス)以上に、練習での紅白戦のほうが激しかったです。プレー精度はもちろん、素早い判断が求められました。トラップしてから考えているようではダメで、そこの意識はだいぶ変わってきました」

 起用された4試合でも、相手のリズムに合わせるのではなく、「スピード感」を重視。結果的に小さなミスは散見されたものの、日本が5-1と勝利したキルギス戦(カタール・ワールドカップ・アジア2次予選)では左サイドのクロスからオナイウ阿道のゴールをアシストするなど、アピールできた部分はあった印象だ。

「自分自身、目に見える結果にこだわっていたので、1アシストとはいえ得点に絡めたのは嬉しかったです」
 
 ただ、フル出場したキルギス戦では状況判断やパスコースの甘さも目立ち、そこを反省している自分もいる。カタール・ワールドカップのアジア最終予選で対戦国のレベルが格段に上がる点も踏まえると、「僕のところにボールが入る前から"次のアクション"を考えないといけない」。

 日本代表に招集される前と後で、意識の変化はある。それが進化を遂げるうえで重要なファクターになり得るが、プロである以上、求められるのは結果。小川はFC東京と日本代表で目に見える結果を残さないと、いわゆる一流にはなれない。ただ、ここで触れておきたいのは日本代表とFC東京が違うスタイルで戦っている点。そうした状況下で代表でもクラブでもハイパフォーマンスを維持するのはなかなかなミッションに映る。

「代表では自分が走ったところにタイミングよくボールが出てくるとか、オーバーラップを仕掛けた際に上手く使ってくれるとか、主に受け手としての役割を担っています。クロスを上げる時もゴール前に人数が揃っているので合わせやすいですね。キルギス戦でアシストしたシーンも、ニアとセンターにひとりずつ走り込んでくれていて、ファーにオナイウ(阿道)選手がいましたから。そうなればクロスを入れやすいです。

 一方でFC東京では1トップのディエゴ(・オリヴェイラ)がサイドに流れると、クロスをピンポイントで合わせないといけない場面が多いです。役割的にも受け手というより出し手になる傾向が強いですよね。僕のところからディエゴに出したり、ゲームを作る側の仕事をしている印象です」
 
 どちらが良い悪いではなく、その両方への対応が今の小川には求められるわけだ。エゴイストではおそらく務まらないサイドバックというポジションの性質上、なにより重要なのはチームの組織をどうスムーズに機能させるか。出し手の時は最高のパスコースを探す、受け手の時は相手の急所となるポジショニングを意識する、いずれにしても状況判断の早さがキーファクターになる。
 

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