五輪選考最後の1~3人に影響を与えるジャマイカ戦残り30分の試み。18人枠に滑り込む可能性が出てきたのは?

2021年06月14日 清水英斗

快勝の陰でボランチ2人の位置関係が気になった

ジャマイカ戦の60分から3バックにシフトしたU-24日本代表。好プレーで評価を上げたと見られるのは…。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 12日に行われたジャマイカ戦、U-24日本代表は4-0で勝利を収めた。

 飲水タイム後の前半32分、スローインから相手のすきを突く、久保建英の股抜きシュートは見事だった。また、42分の遠藤航のインカーブシュート、57分の上田綺世のループシュートも素晴らしい。これはA代表にも言えるが、近年は一昔前の日本代表では考えられないほど、フィニッシュ周りの質が向上した。

 ただし、その反面、U-24ガーナ戦に比べると、この試合はビルドアップがもたついた。攻撃はそれほど良くなかったが、理想的に得点を重ねる決定力と、相手の緩さに助けられた面はある。

 ジャマイカは中盤に人を割き、4-1-4-1の守備ブロックを敷いた。インサイドハーフの2人、15番ラベル・モリソン、22番デボン・ウィリアムズは、遠藤航と田中碧を1対1で見張り、日本の起点にプレッシャーをかける。全体的にミラーゲームでシステムがかみ合わされた中、日本はビルドアップの選択肢に困る場面が多く、特に前半は、後方でのパスミスが目立った。

 気になったのは、ボランチ2人の位置関係だ。相手MFに睨まれたボランチ2人が、CBの吉田麻也と町田浩樹の前に蓋をするように、横並びで立っているため、CBからのパスコースを味方同士で潰し合ってしまい、ボールの流れが悪い。その結果、ビルドアップの詰まりからショートカウンターを食らう場面も散見されたが、本番で同じミスを犯せば、一発で仕留められるかもしれない。

 相手がシステムを噛み合わせてきた場合は、どう動きを出し、それを外すかがポイントだ。例えば、遠藤と田中の横並びを避け、1人を前方に潜らせ、1人がアンカー気味に真ん中に残る。すると、相手は逆三角形のままでは対応できないので、位置がズレていく。もし、アンカーにインサイドハーフの片方が食いつけば、その背後が空くので、そこで久保や堂安にクサビを受けさせればいい。あるいは潜るまで行かなくても、ボランチの片方がサイドに開き、SBを押し上げ、ハーフスペースに絞った三笘薫辺りに縦パスを刺してもいい。

 静的にかみ合った状態から、立ち位置を動かし、空けたスペースを突く。このようなビルドアップの連動は、A代表では遠藤や守田英正、鎌田大地や南野拓実らが当たり前のように実践する戦術だが、オーバーエイジ合流から間もないU-24代表は、まだ難しかった。
 
 チームの完成度としては、森保ジャパンの発足から半年後に行なわれた2019年のアジアカップを思い出す。あの頃のA代表も、相手に4-1-4-1でかみ合わされると、あっさり機能不全に陥ったが、今のU-24代表と姿が重なる。

 とはいえ、2年前のアジアカップから多くの強化試合を積み重ね、成長したA代表と、同じ時間を与えることはできない。U-24代表の本番は、1カ月後なのだ。

 その意味では、後半15分に橋岡大樹と相馬勇紀を投入し、3-4-2-1にシステム変更をした試みが重要だった。
 

次ページ3バックへの変更で全体的にバランスが改善したのは大きい

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