【識者の視点】吉田、冨安を苦しめた看板FWは不在… セルビア戦の大きな発見と測れなかった“世界基準”

2021年06月12日 加部 究

オナイウは追加招集ではなくむしろ最初から呼ぶべきだった

後半から出場したオナイウは惜しいシーンも作り出した。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 バックアップの確認作業としては、十分な収穫を得られた試合と見ることも出来る。

 セルビアが最終ラインに5枚を並べてサイドのスペースを消してきたので、どうしてもダイレクトパスを駆使しての中央突破に偏りがちだったが、チーム全体が焦れずに「前半は我慢」の意識を共有し早めの火消しを努めた。当然我慢はハードワークを伴うわけで、2列目のアタッカーは勤勉にプレスバックを繰り返し、ボランチも汗を流し身体を張って回収した。大きなピンチは一度だけ。終了間際に谷口彰悟が南野拓実に縦パスを入れたところで、ヨヴェリッチに潰されゴール前でフリーのマカリッチに繋がれた。マカリッチのシュートが外れると、この時ばかりはストイコビッチ監督も大きなジェスチャーで悔しさを露にした。

 もし完全にゲームを支配した後半、オナイウ阿道のオフサイド判定がなくカウンターが結実していれば、さらに印象は良くなったはずだ。1-0は辛勝だが、2-0なら手堅い完勝になる。現在日本代表でベストメンバーを選択できているのは、2列目、GK、左SBだが、2列目やGKも五輪後には再び競争開始の号砲が鳴る。レギュラー当確が少ない事情は、チームをほど良く引き締めている。
 
 一方コロナ禍で最終予選が進んでいく過程では、このくらい主力が欠けてしまう可能性も想定しておく必要がある。もちろん24歳以下の選手たちが不在で、今回集まっているのは十分に経験を積んだ選手たちなのだが、それでもアジアの最終予選なら対処可能だという感触は得られた。

 大迫勇也の故障離脱がオナイウの発見という最大の収穫を、五輪代表の活動がこうしてバックアップメンバーの出場機会を呼び込んだことを思えば、いろんな意味で怪我の功名だった。ポスト大迫の一番手は本来なら鈴木優磨だが、なぜか頑なに招集を見送り続ける状況を考えれば、オナイウのポストワークは暗中模索の中で見えた一筋の光明だった。ボールを収めるだけではなく、さらにマークするDFの裏をかくアイデアも豊富なので大化けの可能性も秘めている。所属の横浜での役割とパフォーマンスを考えても、むしろこのシリーズでは追加ではなく最初から招集して、大迫との併用を試すべきだった。
 

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