「幼稚すぎる!」「滑稽」エムバペとジルーの“衝突”にフランス国民は呆然…。EURO直前の不協和音はなぜ起きたのか【現地発】

2021年06月12日 結城麻里

優勝候補フランスでまさかの”対立”が…

ジルー(左)の発言にエムバペ(右)が激怒し…。 (C)Getty Images

 9日から10日にかけ、フランス代表のキャンプ地であるクレールフォンテーヌに予想外の大緊張が走り、フランス中が呆然となった。一体何が起きたのか。時系列で振り返ってみよう。

 ことの発端はブルガリア戦(8日、3-0で勝利)直後のインタビューだ。テレビ局『La Chaîne L’EQUIPE』の通向け人気討論番組「L’EQUIPE DU SOIR」が、いつも通り討論を開始。中継で繋がっていた現地のベルトラン・ラトゥール記者が、2ゴールを叩き込んだオリビエ・ジルーにマイクを向けた。

 ここでラトゥール記者が「最初は目立たなかったけど、最後は2ゴールでしたね」と聞いたため、ジルーはやや気分を害した様子だった。「目立たなかったって、ときには走り出してもボールがこないんだよ。最初はあまり目に入らなかったと言うけど、もしかしたらもっとよく見つけ合うこともできたんじゃないかな」と穏やかに反論した。

 ジルーは、この時、誰も名指しはしていなかった。

 ところがこれを聞いたスタジオは、「明らかにキリアン・エムバペを狙って批判した!」、「カリム・ベンゼマがケガしてジルーと交代してから、エムバペはソリストになった」、「ジルーの気持ちはわかるが言うべきじゃなかった」、「ベンゼマ復帰以来のジルーのフラストレーションが出た」、「いや、それは関係ない」、「ジルーが決めたとき、ユーゴ・ロリスまで走り寄ってジルーを祝福していた。やはり強い絆がある証拠だ」と大騒ぎになったのだ。
 
 そして、しばらくすると、ラトゥール記者の隣にディディエ・デシャン監督がするりと登場。「ジルーは別タイプのストライカーであって、当然別のプレースタイルになる。キリアンがどうしたこうしたという話じゃない。全てはプレーの論理によって決まる。選ぶのは彼ら自身だ」とピシャリ。次いで「あ、もちろん、議論は自由だよ。よい議論を!」と笑って去って行った。

 これでまたスタジオは、「監督が直ちに消火にきたぞ!」と再び興奮したのだ。

 実はこのころ、近くでラジオ『RMC』のマイクに向かったジルーは、「突然投入されて大変だったのでは?」と聞かれ、「そうなんだ、ケガによる投入だからウォーミングアップもできなくて、最初は身体がついてこず、キツかったよ」と答えていた。

 しかし、騒ぎは取り返しのつかないほど大きくなっていた。深夜に近親者からジルーの言葉と討論番組の諸発言を知らされたキリアン・エムバペは、怒り心頭となった。

 翌9日、クレールフォンテーヌでの昼食後、ジルーがエムバペに釈明。報道によれば、「エムバペを指弾するつもりなどなかったこと」「だがコミュニケーション上よくなかったこと」を説明したらしい。実際に、彼は誰も名指ししていなかったのだから。

 だが、エムバペの怒りは収まらなかった。自分がエゴイストなプレーをしたととられるのがどうしても承服できなかったらしい。そこで彼は、代表スタッフに自分の記者会見を開くよう要望。幸いデシャン監督がそれをきっぱり跳ね除け、事なきを得た。
 

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