連載|熊崎敬【蹴球日本を考える】ゴールを背負ったらとにかく強い 湘南・ブルーノは一見の価値あり

2015年05月21日 熊崎敬

ベンチにいる機会は多いが、ブルーノはいいお手本だ。

しっかりとボールを収めるブルーノのポストプレーは一見の価値がある。 (C) J.LEAGUE PHOTOS

 J1昇格チームが激突した湘南ベルマーレと松本山雅の一戦(ナビスコカップ)は、2-1でホームチームに凱歌が上がった。
 
 湘南時代の師弟でもある反町、曺の両監督の対戦はいつも見応えがあるが、この夜は期待したほどではなかった。どちらも3日後のリーグ戦に備えてレギュラークラスを温存、そのためかイージーミスが多発したからだ。
 
 パスを敵に渡してしまい、ボールをもらった敵がまた敵に渡してしまう。そうしたプレーが繰り返されると、ゲームは退屈になってしまう。
 
 だが、観戦者として収穫がなかったわけではない。
 
 ひとつは湘南FWブルーノ・セザルのポストプレー。落ち着かないゲームの中で、彼はほぼ完璧にボールを収め続け、松本守備陣に脅威を与えた。
 
 ゴールを背にしたときのブルーノは、とにかく強い。190センチ、80キロの肉体で背後のマークを抑えつけ、背中で押し込みながら確実に味方にさばく。
 
 背中にはぴたりと敵がついているが、手も足も出せない。無理にでも取りに行こうとしたら、反転されるからだ。
 
 7分に生まれた武田の先制点も、アシストとなったのはブルーノのポストからのパスだった。
 
 ゴールに近いところで、確実にボールを収める。こういうプレーができる選手は価値がある。味方がタイミングを計って前を向いてシュートできる、有利な状況を創り出すことができるからだ。
 
 相手ゴールに背を向けたときのブルーノは、とにかく頼りになる。だが前を向いたときは、それほどでもない。シュート4本を放ちながら無得点。決定機もフイにした。
 
 リーグ戦の出場はまだ3試合。出番を増やすには湘南独特の戦術に慣れ、前を向いたときの質を上げなければならない。
 
 残留を目指す湘南の控え、それがブルーノのいまの立場だ。だが、ボールを収めるプレーについては学ぶべきところがある。
 
 ブラジルに限らず南米には、ボールを収めたら無敵の選手がたくさんいる。それは単に体格に恵まれているだけではない。身体の使い方が巧みなのだ。尻で敵の太腿を抑えつけて、前に出る力を封じてしまったりする。
 
 日本人は敵から離れたところにボールを置こうとするあまり、半身でポストをすることが多いが、これでは体勢が不安定になり、敵の力を抑え込むのが難しい。ブルーノがやっていたように、背中で敵の力を受け止めてしまえば、ボールに手出しされることはない。
 
 ボールを巧みに動かすのは上手いが、ボールを収めるのが苦手な日本人にとってブルーノはいいお手本だ。ベンチにいる機会が多いかもしれないが、そのポストに注目してほしいと思う。

次ページ大きな一歩を踏み出した山田直輝。

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