なぜ日本は10点取る必要がないミャンマー戦で強度を緩めなかったのか? 森保Jの「相手に合わせない」戦いぶりに感じた意志

2021年05月29日 清水英斗

快勝のキーワードは『ハイテンポ』

森保ジャパンはミャンマーを相手に、大迫(写真)の5ゴールなど計10得点の大勝を収めた。写真:JMPA代表撮影

 カタールワールドカップ・アジア2次予選でF組の首位に立つ日本は、ミャンマーを10-0で下し、6戦全勝で最終予選進出を決めた。

 4-1-4-1を敷くミャンマーは、各所が1対1でかみ合う4-2-3-1の日本に対し、序盤はハーフウェーから人を捕まえようとした。しかし、日本はトップ下の鎌田大地がハーフスペースへ流れたり、ダブルボランチから主に遠藤航をアンカー気味に残して、守田英正を相手ライン間に潜らせる配置に動かしたりと、ポジションをずらしながら中盤にすき間を空け、中央を攻略した。

 日本が得点を積み重ねると、ミャンマーはインサイドハーフが遠藤や守田を捕まえに出るのを控え、低い位置でライン間を狭くする意識が、前半の半ば以降は徐々に強まった。それに伴い、鎌田を起点とする日本の中央突破も序盤ほどには機能しづらくなった。

 中がダメなら外。低く構えた相手に対し、日本はサイド攻撃の割合が増えていく。とくに後半は右サイドに室屋成を投入し、サイド攻撃を一層フレッシュに活性化させた。ミャンマーはさらに失点を重ね、60分には5バックに変更して両サイドの幅を抑えようと試みたが、失点は止まらず。大差でゲームを終えることになった。
 
 なぜ、これほどスコアに差がついたのか。快勝のキーワードは『ハイテンポ』だろう。日本はボールを動かすリズム、立ち位置をずらす連動、カウンタープレスの勢いなど、すべてのリズムをハイに保ち、ペースを落とさずミャンマーを圧倒した。

 格下のチームと戦うとき、「相手に合わせるな!」と聞くことは多いが、何を合わせるなと言っているのか。森保ジャパンの場合、プレーテンポを相手に合わせなかった。マンチェスター・シティの監督、ジョゼップ・グアルディオラの言葉を借りれば、「パスより速いドリブルはない」。つまり、人はボールより速く走ることはできない。ミャンマーがいかに俊敏性に優れようとも、ハードワークの意志が強かったとしても、それを上回るスピードでボールを動かし、素早く立ち位置をずらせば、芋づる式に崩せる。日本はそれを90分間シンプルに実践し続けた。10得点はその結果だ。
 

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