識者が推す! J1中盤戦以降の必見タレント|A代表も狙える逸材GK。ラウール的センスを感じさせるFWは?

2021年05月29日 清水英斗

札幌のGK中野は神戸戦の4失点から出場機会を失っているが…

清水氏が注目する5人のJリーガー。左上から時計回りに、中野、染野、西村、井手口、レアンドロ。写真:サッカーダイジェスト

 試合数の違いこそあれ、今季のJ1リーグは日程の約3分の1が消化された。スタンディングの勢力図も徐々に見えてきたなかで、序盤戦を盛り上げた選手がいれば、期待に応えられなかった選手もいた。

 現状は燻っているかもしれないが、持てる能力を発揮すればスポットライトを浴びるはず。そんな選手は誰か。中盤戦以降の必見タレント5人を、サッカーライターの清水英斗氏に選出してもらった。

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 法政大から札幌に加入した中野小次郎のことは、気にかけて試合を見ている。なんと言っても、2メートルの長身GKだ。夢は広がる。元々長い目で見るべき選手だと思っていたが、早くも3月、リーグ戦の浦和戦と神戸戦で2試合のスタメンを飾ったのには驚いた。

 その内容だが、浦和戦はクリーンシートに成功。しかし、神戸戦は4失点を喫した。しかも、チームが3点を奪った後の4失点だけに、ショックは大きい。中野も疑問符が付くプレーが多かった。対戦相手に古橋亨梧のようなJ屈指のスピードスターがいる中で、スペースカバーにどこまで行けるのか、どこまで行くとやられるのか。その皮膚感というか、まだJ1レベルでの状況判断が追いつかない様子で、1対1で突破されたり、無茶なダイビングでPKを与えたりと、ミスが多かった。結局、リーグ戦出場はこの2試合に留まる。

 ただし、こうした状況判断は、GKとして必ず通らなければならない道でもある。チャレンジしなければ、ファインプレーとミスのぎりぎりの境界線は永遠に見えて来ない。もちろん、あまりに多くの血を流せば、神戸戦の後のようにスタメンから外されることになるが、それを恐れて、スケールの小さなGKになってほしくはない。基礎技術の向上と共に、判断力でもJ1適応を果たし、活躍を見せてほしい選手だ。

 中野は身長だけでなく、ビルドアップという持ち味もある。さらに左利きなので、右利きとは異なる変化もつけられる。A代表まで狙える逸材だ。4月初旬に練習中の怪我でしばらく戦列を離れたが、近く訪れる出場機会に向け、良い準備をしてほしい。

 G大阪の井手口陽介は、試合には出ているが、昨季のようなキレがない。コンディションが整わないのか、攻撃に関わるスタッツも物足りない。チームの心臓のような選手だけに、彼の調子が上がらなければ、いよいよ厳しい。日程も過密になってくるので、思い切って数試合休ませ、フレッシュなプレーを見せてほしいところだ。

 コンディション以外では、システムが4-3-3、4-4-2系と試行錯誤したことも、彼のプレーに迷いを与える一因になったかもしれない。同じ中盤でも形が変われば、カバー範囲も変わる。あまり考え過ぎないで済むように、役割をシンプルに成立することも大事だろう。
 

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