極上のプレーがまだ日本で見られる幸せ。イニエスタは神戸のいち選手という枠に収まらない

2021年05月11日 多田哲平(サッカーダイジェスト)

極上のテクニックに同じプレーヤーまでもが魅了される

37歳の誕生日に神戸との契約延長を発表。2年間の新契約を締結した。(C)VISSEL KOBE

 小野伸二は言っていた。

「僕が何かを言える立場ではないですよ。もうね、次元が違う。見ているだけで心が躍るというか。ピッチ外でも素晴らしい人格者で、トレーニング中も真面目らしいです。僕も生で練習を観に行きたいと思ったくらい」

 日本の至宝をもって、そう言わしめる元スペイン代表アンドレス・イニエスタが5月11日、ヴィッセル神戸と新たに2年間の契約を結んだ。

 絶賛するのは小野だけではない。現在神戸に所属するドウグラスは、イニエスタとチームメイトになった直後のインタビューで以下のように語っている。

「サッカー選手なら誰に訊いても、彼とプレーしたいと言うだろうし、誰もが刺激を受けるでしょう。そんな待望のチャンスが自分に来たわけです。(オファーを)断る理由なんてありませんでしたよ」

 山口蛍、酒井高徳という日本代表クラスの選手、さらにダビド・ビジャ、トーマス・フェルマーレン、セルジ・サンペールといった世界的なタレントが神戸に集まったのは、イニエスタの存在とは決して無関係ではないだろう。
 
 その極上のテクニックには、ファン・サポーターだけでなく、同じプレーヤーまでもが魅了される。それはメディアも同様だ。

 18年8月のジュビロ磐田戦でイニエスタが決めたJリーグ初ゴールは、忘れられない記憶のひとつだ。

 ルーカス・ポドルスキの鋭いスルーパスを巧みなトラップでDFをかわしながら反転すると、すかさず出てきたGKをキックフェイントでかわし、無人のゴールにボールを流し込んだ。

 普段は静観するタイプの自分が、その時ばかりは記者席から腰を浮かせ、声を上げていた。

 また翌年6月に行なわれた名古屋グランパス戦もよく憶えている。イニエスタがペナルティエリア手前から伸びやかで痛烈なミドルシュートをゴールに突き刺した試合だ。

 試合後にJリーグ屈指のボランチである米本拓司が「完全に上回られた。初めてあんなに綺麗に上回られた。これが世界か、と思った」と驚嘆した様子で振り返っていたのだ。
 

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