「最後まで擁護した選手は2人だけ」ついに無冠で解任のモウリーニョ、“時代遅れ”を自認しながら己のスタイルに固執し…【現地発】

2021年04月28日 エル・パイス紙

「いい子にしていても、決して試合に勝つことはできない」

モウリーニョ(左)の時代遅れのやり方に選手たちは反発していたという。(C)Getty Images

 トッテナムがジョゼ・モウリーニョ監督を解任した。就任から1シーズン半が経過し、ダニエル・レビー会長の信頼が唯一の生命線だった。しかし2人を繋いだ糸が徐々に先細りする中、第32節アウェーでエバートンを相手に2-2で引き分け、命運は尽きた。

 モウリーニョがトッテナムに残した唯一記憶に残るレガシーはAmazonプライムビデオが制作、配信している「オール・オア・ナッシング ~トッテナム・ホットスパー」だろう。その中でモウリーニョは見事に自らを演じ切っている。

「いい子にしていても、決して試合に勝つことはできない」。選手たちをこう叱責する場面があるが、冷酷でも横柄でも勝てばいいという彼のサッカー観が顕著に現れている。

 しかし、トッテナムではその肝心の結果を残すことができず、モウリーニョはテレビ映えの良さを証明するのみに終わった。今回の解任劇で、SD(スポーツディレクター)の間で評価が下がることは避けられないだろう。

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 モウリーニョが考え込むことが増えたのは、昨シーズン、新型コロナウイルスの感染拡大による中断を経て再開した頃だった。今シーズン、トッテナムは序盤、好スタートを切ったが、その時はすでに求心力の低下は始まっていた。

 選手たちは指導スタイルにも戦術志向にも理解を示そうとせず、それはレアル・マドリー、チェルシー、マンチェスター・ユナイテッド時代に起こったことと同じだった。最大の違いは、就任から1年も絶たないうちに亀裂が生じたことだ。結果的に1つのタイトルも獲得することなく、トッテナムを去ることになった。これはモウリーニョにとって過去20年間のキャリアで初めての不名誉である。

 トッテナムに近い代理人は、残酷な事実を証言する。曰く、モウリーニョはすでに自らの指導メソッドが今の時代にマッチしていないことを自覚し、選手たちがそっぽを向くのは時間の問題だと感じていたという。

 逆に言えばハリー・ケイン、ハリー・ウィンクス、ジオバニ・ロ・チェルソ、デリ・アリ、セルヒオ・レギロン、ダンギ・ヌドンベレといった選手たちの特徴に合った戦術を志向すれば改善できるかもしれなかったが、しかしモウリーニョはあくまで自らのやり方にこだわった。

 結果的に戦い方は守備的になり、自陣に閉じこもる時間帯が増えた。モウリーニョは2001年にウニオン・レイリアの監督に就任して以来、欧州を代表する時代の最先端を行く監督としての名声を欲しいままにしてきた。しかしトッテナムは、彼が指揮したチームの中で最も戦い方が消極的で、創造性にも説得力にも欠けたチームに成り下がっていた。
 

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