連載|熊崎敬【蹴球日本を考える】G大阪を逆転勝利に導いた「指揮官の大胆な決断」と「エースの躍動」

2015年05月07日 熊崎敬

倉田は右SBの準備はしていたが、左はやっていなかった。

後半に2ゴールを挙げて難敵の城南を退けたG大阪。指揮官の大胆な采配が反撃の呼び水となった。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 2連敗スタートとなったG大阪が、後半3試合に3連勝。グループステージ首位通過を果たし、三冠王者の面目を保った。
 
 もっとも、薄氷の勝ち抜きだった。城南FCとのグループステージ最終節は立ち上がりの15分に失点。同時刻に勝点で並ぶブリーラム・ユナイテッドが大量リードしていたため、G大阪は逆転しなければならなくなったからだ。
 
 だが彼らは、この苦境を乗り越えた。64分に宇佐美、82分にリンスがゴールを決め、城南を退ける。4分のアディッショナルタイムが過ぎ、試合終了のホイッスルが響くと万博競技場は拍手喝采に包まれた。
 
 この勝利の立役者はふたりいる。ひとりは長谷川健太監督だ。
 前半45分、G大阪はいいところがなかった。先制されただけでなく、敵に渡してしまうミスパスが多く、頼みの2トップも動きが重い。
 
 だが、指揮官の采配がラスト45分での逆転を呼び込んだ。
 55分、小椋に代えて岩下。戦列を離れていた岩下をスクランブルで投入し、不慣れな右SBを務めた小椋のところに丹羽をコンバートする。
 右サイドからの攻撃を強化するとともに、最終ラインを安定させた長谷川監督は3分後、二川に代えてリンス投入。左サイドに宇佐美を落とした攻撃的なシステムに切り替える。
 そして75分には左SB藤春に代えて倉田投入。
 
 長谷川監督は3番目の交代について、こう語った。
「藤春は連戦でコンディションが非常に悪かった。ただ倉田は右SBの準備はしていたが左はやっていなかったので、交代の時は『え? 左ですか?』という感じだったけど、『とにかく行って来い』と送り出した」
 
 この3つの交代によって、G大阪は息を吹き返した。指揮官は大胆な決断によって炎を大きく燃え上がらせたのだ。

次ページ左サイドにコンバートされた宇佐美は水を得た魚となった。

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