メッシにも気を遣わない無邪気な“奇想天外アタッカー”がついに覚醒。ネイマールにはない魅力とは?【現地発】

2021年04月26日 エル・パイス紙

だらしない私生活を送っているという風評が…

故障を繰り返してきたデンベレがついに本領を発揮している。(C) Getty Images

 ウスマンヌ・デンベレがバルサの前線の柱に成長した。昨年11月に怪我で戦線を離脱したアンス・ファティが輝きを放っていたシーズン序盤にこのような急激な上昇曲線を描くと吹聴しても、誰も信じなかっただろう。

 それほどデンベレは周囲の信頼を失っていた。怪我の多さに加え、だらしない私生活を送っているという風評がさらにその風当たりの強さに拍車をかけていた。ネイマールがパリ・サンジェルマンへと逃げ去り迷走しているクラブにおいて、デンベレもまた彷徨い続けていた。

 しかし最近は自信がついてきたようで、実に楽しそうにプレーしている。ファンはその変貌を好意的に見守り、フロントも来年6月末に満了する契約延長に前向きな姿勢を示している。

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 ただデンベレが絡むプレーがどのような形で終えるか分からないのと同じように、契約問題についてもどのような決着を迎えるのか現時点では予想がつかない。いずれにせよ、その奇想天外さが彼の魅力でもあり、ファンもそれを受け止め始めている。

 デンベレのプレーは良くも悪くも周囲の関心を集める。何をしでかすか分からないだけに、抱きつきたくなる時もあれば、羽交い絞めにしたくなる時もある。23歳になったとはいえ、そのプレースタイルは子供のままで、相手の選手はもちろん、チームメイトも解読することができない。あのリオネル・メッシですら、だ。

 さらには他のチームメイトが"10番"に見せる気遣いも、デンベレにはない。メッシにパスを出さずにシュートチャンスをふいにしても、さらにそのプレーの選択について叱責を受けても無頓着で、カンプ・ノウのプレッシャーとも無縁だ。

 デンベレが心掛けているのはいかに違いを作り出すこと。周囲と連動してプレーすることは二の次で、スピードとリズムチェンジを駆使したドリブルは特にオープンスペースで威力を発揮する。ゴール前でもそのエキセントリックさは変わらず、左右どちらの足からシュートが繰り出されるかまるで予測がつかない。

 デンベレの特徴は数字からも明らかだ。ボールロストが多く、セオリーを無視したプレーを見せることもしばしばだ。フィニッシュの精度も高くはなく、その常にマイペースな振る舞いは、集団プレーが重視される昨今のサッカーのトレンドの真逆を行く。一部にはデンベレがこうして活躍を見せているのは、ロナルド・クーマン監督の努力にもかかわらず、バルサがチームとして未完成であることの裏返しと考える者もいるほどだ。

 ともあれ、デンベレが目下好調であることは間違いない。そのリスキーなプレーがドリブルの切れ味を増し、29節のバジャドリー戦(バルサが1-0で勝利)の90分に叩き込んだ決勝点のように意外性のあるゴールを決めることに繋がっている。
 

次ページどんなに彼のプレーに絶望させられても…

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