「移籍市場が閉まっている時は…」欧州クラブで働く日本人強化スタッフの仕事に迫る――【STVVの野望】

2021年04月27日 ワールドサッカーダイジェスト編集部

移籍に関する資料作成が主な業務

学生時代はバスケに夢中だったという柴田氏。まさか自分がサッカークラブで働くとは夢にも思っていなかったという。© STVV

 17年に『DMMグループ』が経営権を取得し、現在では5人の日本人選手と多くの日本人スタッフが在籍するベルギーのシント=トロイデン(STVV)。

 そこで働く人たちから話を聞き、欧州サッカークラブの"リアル"に迫るのが『ワールドサッカーダイジェスト』誌で好評連載中の「STVVの野望」だ。第5回目は、DMMの社員としてベルギーに渡り、後に強化部スタッフとなった柴田コーリー氏に仕事内容について語ってもらった。

――DMMによるクラブ買収が決定する前の17年8月にベルギーに渡ったそうですが、最初はどんな仕事をされていたのですか?

「主に情報収集ですね。まずはSTVVがどんなクラブなのかを徹底的に調べました。ほかには、他クラブのマーチャンダイジングやスポンサー契約の内容、ベルギー・リーグ自体がどういった活動をしているのかなど、情報整理が主なタスクでした。17年11月に完全買収が決まってからは日本側とのパイプ役として、スポンサー向けの営業資料づくりや、プロモーション活動などにも携わっていました」

――強化部に異動されたきっかけは?

「自身の希望もありましたが、強化部が人手不足だったこともあって、19年1月に異動になりました。ちょうどビジネスサイドに日本人スタッフが増えてきたタイミングで、仕事が引き継ぎやすかったというのも大きかったかもしれません」
――強化部では実際にどのような仕事を?

「移籍に関する業務全般です。もちろん交渉にはCEOや強化部長が当たるんですが、クラブへのオファーレターや、選手や代理人に送る資料作りなどを担当しています。選手の獲得が決まれば、契約書の作成やリーグへの登録、ビザの取得などの作業も行ないます。さらにユニホームや練習着の発注も僕のタスクのひとつです。18年からの2年間は『デサントジャパン』の『アンブロ』とサプライヤー契約を結んでいて(20-21シーズンからはイタリアの『マクロン』社がサプライヤーに)、日本語でのやり取りがメインだったので、この業務は強化部に移る前からやっていました」

――オファーレターは選手によって違いがあると思うのですか?

「移籍交渉ではボーナスやオプションなど個別の案件が出てくるのは確かです。ただ、STVVではそういった不確定要素をなるべく少なくするようにしています。選手側もある程度の給与を保障してほしいという気持ちがあるので、基本給の比重を高くしていますね。そのほうが経営サイドとしても予算計算がしやすいですから。もちろん、車や住居の手配などディテールは選手によって様々な違いがあります」

――監督交代などによって仕事のやり方が変わることはありますか?

「ほとんどありません。僕の仕事はピッチとは直接関係がないので。チーム内でもなるべく監督に依存しないような体制づくりを意識しているため、現場に近い人間も働き方が大きく変わることはないと思います」

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