「我々は彼らを許さない」仏紙がCL軽視のスーパーリーグ構想に憤怒! 一方で、“裏切り者”にならなかったパリSGが抱えるジレンマ【現地発】

2021年04月20日 結城麻里

「金持ちどもの戦争」の見出しを打ち…

伝統あるCLの権威を揺るがすとスーパーリーグに猛批判。 (C)Getty Images

 アメリカの大銀行JPモルガンの財政支援で、12の欧州メガクラブが欧州スーパーリーグ創設を宣言した。これにより、フランスはいま激怒の嵐に包まれている。

 発表直後の夜の討論番組『L’EQUIPE DU SOIR』は、急きょ経済学者ピエール・ロンド氏を呼び寄せ、12クラブの構想を分析した。

 同氏によると、スーパーリーグ全収益の32%以上は結果の如何にかかわらず常に創設クラブに分配される構想で、純粋スポーツ面(結果)による分配は全体収益のたった20%。また、テレビ視聴率の高さまでが分配基準になっているという。要するにメガクラブが最初から大金を手にできる「ビジネス興行大会」で、出演者も視聴者も目がテンになった。

 番組はまた、イングランドでも猛反発が噴出していることを次々に速報。マンチェスター・ユナイテッドのレジェンドであるアレックス・ファーガソン卿が、このプロジェクトに怒り心頭のコメントを発したこともいち早く伝えた。

 一夜明けた現地時間19日の『L’EQUIPE』本紙は、一面に「金持ちどもの戦争」の大見出しを掲げ、憤怒と疑問を主張。社説では、フランスを代表するオピニオンリーダーのヴァンサン・デュリュック記者が、「裏切者ども」の見出しで容赦なく12クラブを斬首した。
 
 その書き出しは、「もし彼らが自分たちのプロジェクトの最後まで行くなら、我々は彼らを許さないだろう。また彼らが諦めたとしても、それでも許さない」だった。

 フランスはカトリックの伝統から許す心と寛大さを重視しているため、「許さない」は滅多に使わない言葉で、これを使うときは「死んでも許さない」という意味合いをもつ。けっして許してはならない不正義に命がけで抗するときの言葉であり、感情的なこけ脅しではない。

 次いでデュリュック記者は、「1954年にこの新聞によってもたらされた思想を裏切るばかりでなく、ずっと以前から欧州フットボールを愛し、その建設を助けてきた全ての人々を裏切るものだ。彼らは他の人々のお蔭で自分たちのいまがあることを忘れてしまった」と痛烈に斬った。

 チャンピオンズ・リーグ(CL)は『L’EQUIPE』紙記者の奔走によって純粋スポーツ的な観点から創設され、それを基本に多くの人々の努力で世界的に発展してきたからだ。

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