【清水】きっかけなき“敗戦”

2015年04月30日 増山直樹(サッカーダイジェスト)

タイスコアは妥当な結果だと感じる。

ヘディングでチームの2点目を奪った長沢。ただ、点差とは裏腹に「やれている感じはしなかった」と前半の戦いを振り返る。写真:J.LEAGUE PHOTOS

 試合終了後、スコアボードには「3」がふたつ並んだ。ホームの清水が前半のうちに3点をリードするも、85分過ぎから山形が立て続けに3得点。結果的に、下位対決にありがちな痛み分けだ。
 
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 無論、清水にすれば負けに等しい印象が残るだろう。あと10分のところまで大量リードを保ちながら、勝点2が逃げていったのだ。にわかに信じがたい試合展開、しかも相手はこれまでのリーグ戦7試合で2ゴールしか挙げていなかった17位のチーム。大型連休の幕開けに"悪夢"を目の当たりにし、行き場のない怒りに身をまかせて選手バスを取り囲むサポーターの心境も、多少は理解できる。
 
 それでも、率直に言ってタイスコアは妥当な結果だと感じてしまう。残り10分で3点を取られたことが普通だと言いたいわけではない。ただし90分間を通して、あのまま清水が逃げ切っていれば、むしろ不思議な感覚を抱いていただろう。
 
 前半の戦いだけを振り返っても、決して清水が良かったわけではない。3点こそ奪ったが、純粋な意味で流れのなかから相手を崩したゴールはひとつもなかった。1点目はFKが流れたもの、2点目はスローインの展開から、3点目はセットプレーから相手のクリアを拾い、オフサイド気味の位置にいたP・ウタカが詰めた。どれも、ラッキーな要素は否めない。
 
 2点目を決めた長沢が「やれている感じはなかったし、やられている感じのほうが強かった」と語るように、むしろ山形に押されるシーンが目に付いた。この日の清水は今季初めて3バックを導入したが、アンカーに入った竹内の横を突かれ、ディエゴ、川西、R・フランクが絡んだ細かい崩しを許している。そこからサイドへ展開され、高木やキム・ボムヨンのクロスから何度もピンチを迎えた。
 
 それでも失点しなかったのは、相手のクオリティ不足に助けられたからだ。開始1分の川西の右足がミートしていれば、試合は真逆の展開を迎えたかもしれない。7分にはディエゴ、24分には松岡にそれぞれエリア内から決定的なシュートを許した。前半を終え、山形の石﨑監督が「チャンスはできている。顔を上げてプレーしよう」と選手を鼓舞したのは、至極全うと言える。

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