各州リーグは中断でも全国選手権は継続…コロナ禍で大混乱のブラジルで悲痛な叫び「お願いだから試合を止めてくれ」【現地発】

2021年03月28日 リカルド・セティオン

サンパウロ州リーグをリオデジャネイロ州で開催する異常

サンパウロ州サッカー協会の対応を皮肉ったのがF・メロだ(右)。(C)Getty Images

 ブラジルではサッカーでなにかとんでもないことが起こると、ブラジル・ワールドカップのドイツ戦を持ち出し、「1-7がまだ続いている」「ドイツのゴール!」などと言う。しかし、今のブラジル・サッカー界ではその「ミネイロンの悲劇」以上の混乱が続いている。

 ブラジルは、今また新たなパンデミックに襲われている。それも、これまでにはないほどの厳しさだ。これまでに30万人が亡くなり、感染者は1200万人、3月23日には一日の死者が3251人と過去最多となっている。

 リーグ中断のせいで、昨年末に終了するはずだった全国選手権が2月までずれ込んだため、今年の州リーグは休みなく、全国選手権終了の翌週には始まった。しかし、ここに来て多くの州のサッカー協会が、リーグの中断を決断し始めた。今では25の州リーグ中、18がストップしている。

 しかし、サッカー協会やチームはこれに全面的に賛成なわけではない。ブラジルのチームは経済的な危機に陥っている。試合は昨年の4月からずっと無観客で行なわれている。唯一の例外は、マラカナンに5000人の観客を入れた、サントス対パルメイラスのコパ・リベルタドーレス決勝だけだ。

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 無観客により、セリエA(1部)のチームだけでも1億ドル(約110億円)以上の損失が出ているという。それ以下のチームに至っては、存続の危機にあり、州リーグは命綱でもあった。ちなみに我らが大統領は、「コロナはただの風邪」とのたまい、死者が増えてからは「いつまでも女々しく泣くのは十分だ。涙はすてて人生を続けよう」などと言っているくらいだから、国からの支援も期待できない。

 サンパウロ州サッカー協会は、州政府のリーグ中止の決定を不服として訴えたが、裁判所の命令で中止せざるをえなかった。そこで彼らはある抜け道を考えた。リーグの第5節をプレーさせてくれるスタジアムを、州政府の権限の及ばないサンパウロ州の外に求めたのである。

 最終的にリオデジャネイロ州のヴォルタ・レドンダという小さな町だけがこれを受け入れ、この水曜日サンパウロ州リーグのコリンチャンス対ミラソウの試合がここで行われた。

 すべては茶番だ。ヴォルタ・レドンダがあるリオデジャネイロ州リーグも中止されている。この町のチームは自分たちのスタジアムでプレーできないというのに、他州のチームがプレーしていいというのは、まったくもっておかしな話だ。
 

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