【識者コラム】明暗クッキリの日韓戦、なぜ今回は日本の完勝に終わったのか?

2021年03月26日 加部 究

日本の土俵で戦おうとしていた韓国は、ポステコグルー監督時代の豪州を想起させる

大迫とキム・ヨングォンが激しく競り合う。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 日常レベルと戦術選択の是非が如実に明暗を分けた日韓戦だった。

 日本では森保一監督に限らず、どこの現場でも「球際」や「切り替え」が群を抜く流行語になっている。国内で川崎が格好の手本を示している好影響もあるのかもしれないし、もちろん欧州ではそれなしには生き残れない。

 結局スタメンのうち欧州組が8人を占めた日本は、国内組中心の韓国に対し歴然とした「日常の違い」を見せつけた。

 一方韓国側の事情を探れば、パウロ・ベント監督とのミスマッチが見て取れた。同監督は国際的な見地に立ち、韓国をトレンドへと導こうとしている。特に前半はGKも交えて最終ラインから丁寧にショートパスを繋ごうとする姿勢が顕著だったが、日本に脅威を与えるチャンス創出には至っていない。思い出すのは、韓国に歯が立たなかったアマチュア時代を脱却し、日本がハンス・オフト監督の就任でライバル関係を築き上げていく経緯だ。それまで日本の指導者たちは、韓国が優位に立つフィジカルで追いつこうと檄を飛ばして来たという。だがオフトは、技術をベースに組織的な規律を整理し、韓国とは別の戦い方を選択して新しい可能性を提示した。

 逆に韓国代表のベント監督は、どちらかと言えば日本の土俵で戦おうとしている。それは現在横浜FMを率いるアンジェ・ポステコグルー監督がオーストラリア代表時代に実践した改革に似ている。アジアの実情を考えれば、オーストラリアはフィジカルの利を活かし、ゴールに直結するロングボール多用の戦術を採る方が即効性を見込める。だがポステコグルー監督は、その先の世界で戦うことを見据えて舵を切った。オーストラリア代表が随分と不似合いな戦い方をしてくれたので、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督時代の日本は恩恵を受けた。ただし今ではオーストラリアも精度の高いテクニックを備え、しっかりとゲームを構築する文化が根づきつつある。

 韓国にとっても、いつかは通らなければならない道なのかもしれない。だが少なくとも現状にはそぐわないので、おそらくベント体制がハッピーエンドにならない可能性は高い。
 

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