欧州におけるベテラン選手の契約の“傾向”。やや厳しい日本との違いは?【小宮良之の日本サッカー兵法書】

2021年03月24日 小宮良之

もしピケのケガが契約の前だったら…

契約延長を勝ち取ったピケ(左)とモドリッチ(右)。(C)Getty Images

 契約を交わす。

 それは、サッカー選手にとってプロであることの証明である。契約がないサッカー選手は、宙に浮いた存在になってしまう。職業として、名乗れない。一転して、何者でもなくなってしまう危険があるのだ。

 そしてベテランとして年を取るたび、契約を交わす、という作業は難しくなる。年俸が高くなっているのは理由の一つだろう。ケガに対する耐性や回復力も不安視される。若手のノビシロ、という意見もあるだろう。

 しかし、ベテランはプロ選手としてのルーティーンがあり、ケガの予防やケアも心得ている。その点、ケガに対しては一定の強さがあると言える。たしかに若手のような成長の爆発力は見込めないが、実績があるだけに、年俸に見合う働きができる計算も立つ。若手が伸びる、という確約などどこにもないのだ。

 それでも、「ベテラン選手とは、複数年で契約するのにリスクがある」という考え方をするクラブが一般的だろう。世代交代は一つの流れである。日本サッカー界では特に、ベテランに対して厳しい。基本は、単年契約になるか。

 欧州のビッグクラブのベテラン選手は、35歳くらいまでは複数年が基本になっている。例えば1シーズン、レギュラーとしてプレーした選手が、ベテランであることを理由に切られることはない。戦力になっている選手に対しては、どれだけ遅くても(選手がフリーエージェントでの移籍を志願していない限り)シーズン半ばでは契約を更新するものだ。

 例えば、レアル・マドリードのクロアチア人MFルカ・モドリッチは35歳になるが、今も衰えぬプレーを見せる。引く手あまた。そこで昨年12月、年内で切れるはずだった契約を1年延長(2022年6月末まで)に合意している。
 
 そもそも欧州では、契約が残り1年になってしまう前に、契約延長をするかどうか、という話し合いが行われるのが通常だろう。シーズンをレギュラーとして戦っている選手は貴重な戦力。それが前提で、その選手を切るというのは、シーズンそのものを否定することになるし、選手に対するリスペクトを欠くことにもなるのだ。

 もっとも、35歳前後になると、契約交渉がデリケートになるのは、世界中どこでも同じだろう。

 FCバルセロナのスペイン人DFジェラール・ピケは33歳の時点、昨年10月に2024年(37歳になる)までの大型契約を勝ち取っている。その後、11月に右膝靱帯に大けがを負い、全治3か月の診断を受けた。もしケガが契約の前だったら、条件は悪くなっていた可能性が高いだろう。

 契約を交わす。

 それはプロサッカー選手としての証明だ。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
 
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