本当に「信じる」べきなのか。危機感を覚えた柏の攻撃を考察

2021年03月11日 志水麗鑑(サッカーダイジェスト)

ポゼッションという道を信じて進むべきだと思うが…

リーグ開幕からの公式戦4試合で、3戦無得点。柏の攻撃はいまいち機能していない。写真:徳原隆元

「これから実現しようとしているものを信じて戦い続けるしかない」

 0-1で敗れた名古屋戦後、柏のネルシーニョ監督は選手たちにそう伝えたという。ハーフタイムには「奪ってからはもう少しボールを握って、我々のテンポでボールを動かそう。良い守備から良い攻撃につながるように、自分たちのやろうとしていることを信じて戦おう」と選手に話し、後半は「しっかりと自分たちのテンポでボールを動かすことができた」と評価したのだから、信じる道とはポゼッションだろう。

 確かに挽回した後半は猛攻を仕掛けた。JSTATSによると柏は、前半はシュート1本、ボール支配率40%だったが、試合終了後のスタッツでは前者が10本、後者が50%まで持ち直している。改善した後半のオフェンスは、数字上では信じて然るべきものだった。

 選手の体感としても、後半の攻撃には手応えがあったようだ。前半の反省を踏まえつつ、上島拓巳が語る。

「ビルドアップのスタートとして僕と大南(拓磨)選手が効果的な配球をできなかったことが、(前半に)なかなかゴール前までボールを運べなかった原因。後半はビルドアップの入り口で少し改善が見られたので、押し込める時間帯が増えました」

 そして具体的な改善法は「ポジショニングと意識付け。それを行なうことによって改善できました」と明かした。

 監督、選手のコメントともにそのとおりだし、筆者もポゼッションという道を信じて進むべきだと思う。なぜならオルンガがいない現メンバーなら、ボール保持が適正戦術だからだ。しかし、リーグ開幕からの公式戦4試合で、無得点で敗れたのは3度目。危機感を拭いきれない。改善すべきポイントは他にもある。

 気になったのはふたつ。ひとつ目は攻撃の緩急だ。

 確かに後半はポゼッションで敵陣に押し込んだが、正直なところそれでも柏に得点の可能性は感じなかった。理由はパス回しが一定のリズムで進み、その間に相手に守備ブロックを構築されてしまっているため。統制された壁に突っ込めば撥ね返されるのは必然である。

 唯一、今後のヒントになる好プレーは82分、椎橋慧也から縦パスを受けた仲間隼斗が江坂任へつなぎ、10番が素早く左足を振り抜いたシーン。シュートこそ外れたが、スピードアップしたおかげで、相手DFの対応はやや間に合っていなかった。

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