結果と内容を両立――。名将クロップへのバッシングに思う“サッカー界の非情”【現地発】

2021年03月05日 エル・パイス紙

クローズアップされているアタランタ指揮官の指導力

昨シーズンとは一転、年明け以降は厳しい戦いを強いられているクロップ。(C) Getty Images

 いくら名声を得ても、結果が出なければ、すぐに無力化されてしまう。現在ユルゲン・クロップが置かれている状況を目の当たりにすると、サッカーの非情さを改めて実感させられる。

 昨シーズン、圧倒的な強さでリバプールを30年ぶりのトップリーグ制覇(プレミアリーグとなってからは初)に導いた手腕を評価され、FIFA男子年間最優秀監督賞に選出されたのはわずか2か月余り前のことだ。確かにこうした賞は付録に過ぎないが、メディアの威光も借りて成功を測るバロメーターの役割を果たしているのは間違いない。

 しかも、クロップはボルシア・ドルトムント時代にブンデスリーガを連覇(10-11、11-12)し、2015年10月にリバプ―ルの監督に就任してからは18-19シーズンにチャンピオンズ・リーグ(CL)を制覇した。しかしこれだけの実績をもってしても、結果の前ではあまりにも無力だ。2020年の暮れに称賛と賞を欲しいままにしていた栄光の日々から一転、年明け以降のチームの失速が原因で激しいバッシングを浴びている。

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 ただこれは何もクロップだけが直面している現象ではない。ライバルのジョゼップ・グアルディオラ(マンチェスター・シティ監督)も、国内リーグだけでもプレミアリーグを2度、ブンデスリーガとラ・リーガをそれぞれ3度ずつ制覇しながらも、結果が伴わなければ、あるいはメディアが設定するノルマを達成しなければ、瞬く間にバッシングの対象となる。

 だが、クロップとグアルディオラが一流の監督と呼ばれるのはれっきとした理由がある。その最たるものが率いるチームに明確なコンセプトを刷り込む卓越した指導力だ。

 その意味ではジャン・ピエロ・ガスペリーニのケースは象徴的だ。このアタランタの知将の指導力が昨今これほどまでにクローズアップされているのは、一介のプロビンチャをセリエA、CLで未知のステージまで導いた実績以上に、見る者の心を揺さぶる攻撃的なスタイルを前面に押し出してその偉業を成し遂げている手腕が評価されているからに他ならない。

 クロップも同様だ。2008年夏にボルシア・ドルトムントの監督に就任した時、ドイツ屈指の名門は低迷期にあった。しかしチームを立て直し、前述したようにブンデスリーガ連覇を達成。12-13シーズンには決勝でバイエルンに敗れたとはいえ、CLのファイナリストとなった。そして14-15シーズン終了後に退任した際、数々の忘れられない思い出とともに自らが「ヘビーメタル」と称し、丹精込めて進化させてきたプレーモデルを置き土産として残していった。

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