「酒井への批判は理解できない」「長友は準備が…」フランスの智将はマルセイユの日本人コンビをどう見る?【独占インタビュー/前編】

2021年03月01日 結城麻里

「少しフィニッシュやクロスの精度に欠ける点はあるかもしれないが…」

マルセイユで奮闘を続けている酒井宏樹(左)と長友佑都(右)をフランスの名伯楽が分析した。 (C) Getty Images

 アラン・ペランは、2007-08シーズンにリヨンを率いてリーグ・アンを制して、翌シーズンには古豪サンテティエンヌの指揮官として松井大輔(現サイゴンFC)を指導。日本でも馴染みのあるフランス人監督だろう。

 フランスのテレビ『Telefoot』で解説を務めてきた百戦錬磨の智将に、フランス・サッカー界で活躍する日本人選手や教え子であった松井に関して、興味深いテーマをぶつけてみた。

 今回は、不振にあえぐ古豪マルセイユで奮闘する日本代表DFの酒井宏樹と長友佑都に関する私見を訊いた。

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――さて、あなたの試合解説を聞いていると、フットボールに精通しているのは当然として、日本人プレーヤーにも理解があるように感じました。マルセイユで5年目を迎えている酒井宏樹をどう分析していますか?

アラン・ペラン(以下、P):私はあの選手が大好きなんだ。非常に寛大で、努力を惜しまず、チームのために全力を尽くし、規律も正せる。攻撃にも絡んでくれるし、大きな熱意も注入してくれるからだ。

 一緒に仕事するとなれば、とても簡単だろうし、非常に重要な存在だからこそマルセイユで多くの試合に出場してきたんだ。マルセイユにとっては、太鼓判を押せる選手だと思うね。しかもフットボーラーとしてのクオリティだけでなく、人柄も愛されてもいる。人の言葉にしっかり耳を傾ける非常にいい性格で、チームにも溶け込んでくれているように思うね。

――時折、一部のフランス人ジャーナリストから、手厳しい評価を受けている印象もありますね。

P:あれは私も理解できない。代表選手だからというのもあって、もう一段階、上の要求しているのかもしれない。とにかく、何が気に入らないのか、正直よくわからないよ。確かに攻撃参加のときに、ほんの少しフィニッシュやクロスの精度に欠ける点はあるかもしれないが、一番重要なのは彼がもたらすあの努力だ。

 彼はもの凄い労力を注入する選手で、チームのために働いてくれる。とにかく最大限に働くんだ。だから、できないことまで全てを求めるわけにはいかないよ。もちろん、超ハイレベルなメガクラブで活躍するには限界もあるかもしれないが、ビッグクラブであるマルセイユでは、すでに十分すぎるほど良いと思うね。


――酒井を注視しているせいかもしれませんが、たとえば、彼はワンタッチやツータッチでプレーできるのに対し、他の選手たちにそれができない。それなのに批判を受けるところに、少し不思議な感覚を抱くのですが。

P:案外、それが原因かもしれない。彼の前には(フロリアン・)トバンがいるが、彼らなら大きなスペースに走らせて、ワンタッチで繋ぐプレーができる。だが、他の選手たちは酒井にとってスピーディーじゃないかもしれない。

 とはいえ、酒井はサイドバックだから、ドリブルで突破して打開していく選手ではない。とても複雑だけど、やはり酒井に要求しすぎなんだと思う。「このポジションにもっといい選手を見つけるべきだ」というコメントを見聞きするたび、私はいつも驚いてしまう。

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