ブンデス3位につけるヴォルフスブルクの強さの秘密は? 6年サイクルで繰り返す“絶頂期”のジンクス【現地発】

2021年02月25日 中野吉之伴

長谷部らを擁した2009年のリーグ制覇から始まり…

冷静に指揮を執るヴォルフスブルクのグラスナー監督。(C)Getty Images

 ヴォルフスブルクは6年ごとにブンデスリーガで旋風を巻き起こすのが定例になっているようだ。

 クラブ史上初となるブンデスリーガ優勝を果たしたのが2009年。若かりし頃の長谷部誠が右サイドで躍動し、トップ下のズベズダン・ミシモビッチ、そして2トップのブラジル人FWグラフィッチとボスニア代表エディン・ジェコが驚異のトライアングルを形成。バイエルンを相手に、アウェーで1-5の勝利を挙げた試合がなんとも象徴的だった。

 その6年後にあたる15年には、ディーター・へキング監督のもと、今度はケビン・デ・ブルイネらを中心に、リーグ2位でフィニッシュ。DFBポカール制覇も成し遂げた。

 そして再び6年後の今シーズン、ヴォルフスブルクは第22節終了時で3位につけている。

 チームを率いるオリバー・グラスナー監督は決して騒ぎ立てたりしないタイプだ。メディアの前で挑発的なことを口にすることもなく、常に冷静に事象を分析し、対策を練る。

 メディア対応は、09年優勝メンバーであるスポーツディレクターのマルセル・シェーファーの仕事だ。彼はフレンドリーなほほえみと適度な距離間で記者からの質問に丁寧に答えている。そして、ブンデスリーガで経験豊富なイェルグ・シュマッケが身の丈にあった経営方針を整え、クラブの基盤をがっちりと守る。この3人が中心となり、それぞれの役割分担がきれいに機能し、選手たちを下支えしている。
 
 ヴォルフスブルクはかつて、バイエルンを脅かし、タイトル争いができるチームを作ろうと躍起になった時期があった。ユリアン・ドラクスラー、アンドレ・シュールレら代表選手を獲得するために大金をはたいた。

 その野心は良かった。ただ、クラブに来る選手は大金を手にしたことで野心を置き忘れてきてしまったかのように、ピッチ上では鳴かず飛ばずというケースが増えた。個々の選手の能力は高いはずなのに、試合となるとあっさり勝負を落としてしまう。

 シュマッケ、シェーファー、グラスナーのトリオはその空気感を変えることに尽力した。このクラブのために全力で戦える選手を揃え、そこでそれぞれが力を発揮できるチーム作りを進めた結果だ。

 現在、直近のリーグ戦8試合連続無敗で、6試合連続無失点と安定感は抜群。先発は固定されているが、控え選手の雰囲気も悪くない。それどころかみんな控室で笑い、歌い、冗談を言い合えている。

「我々はみんな一緒に喜び合うことができる。これがサッカーの良さだよ。みんなで一緒に歌い、踊る。雰囲気を作り出してくれる選手がたくさんいるのも素晴らしい」(グラスナー)
 

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