京都が生んだ14歳の新鋭レフェリー。史上最年少の記録を打ち立てたユース審判員が目指すW杯の舞台

2021年02月19日 竹中玲央奈

史上最年少でサンガカップの笛を吹く

中学生ながら異例の主審に抜擢。地元関係者も期待する“逸材”だ。写真:竹中玲央奈

 14歳のサッカー少年が「夢はワールドカップの舞台に立つこと」と言っている。

 なんら珍しいことではない。全国各地でこの思いを持った少年少女たちが日々、ボールを追いかけていることだろう。ただ、その舞台での役回りが異なったらどうだろうか? そうそう多くはないだろう。

 京都府サッカー協会の3級審判として登録されている森璃久翔(もり・りくと)が冒頭の夢を語った張本人だ。2月7日にサンガスタジアムby KYOCERAで行なわれたサンガカップ第43回京都少年サッカー選手権大会の決勝において、森は主審の大役を任された。関係者によると、長い大会の歴史の中で、中学生にして決勝の笛を吹いた人物はいない。この日、森は史上最年少の記録を打ち立てたことになる。

「決勝の笛を吹ける実力がある、ということで森くんは選ばれたんです。ユース審判の中で優秀ということ。将来にわたって育ってほしいという意味もあって、彼が主審をすることになりました」

 協会関係者がこう語る通り、小学生の大会とは言え、非常に大きな意味のある出来事なのである。

 森が本格的に審判を始めたのは小学5年生の頃である。
「選手だけではなく他の視点からサッカーでできることがないか、と考えたときに"審判"が浮かびました」

 笛を手にとった経緯をこう語るが、10歳そこそこの年齢でこの思考に至ったことに驚いた。なお、当時から現在に至るまでプレーヤーとしても活動を続けているが、高校入学と同時に審判活動に専念するつもりとのことだ。

 小学5年生のうちに4級を取得し中学生で3級を取得すると、京都府からの派遣で高校生の試合の審判員を務めることもあった。サッカー経験者であれば、その難しさ、やりにくさを理解できるはず。中高年代で年上の試合の審判を務める際、ポジティブな感情になることはあまりないだろう。ジャッジに対して不満をぶつけられることは少なからずあるし、精神的なダメージも負う。筆者自身そういった経験を通じて「できれば審判はやりたくない」と思っていたものだ。

 森自身、年上の高校生が試合する試合でスタッフや選手に"口撃"されることはあったというが、ネガティブにはならなかったという。
「これも経験なので。自身がレベルアップをしていく上で大切なことなので、(言われて)嫌だと思ったことはないですね。プラスに捉えようと」

 14歳でこう言える彼からは、大物になる予感が漂う。
 

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