【取材記者の視点】鎌田のスーパーゴールを栗原はなぜ“傍観”したのか?

2015年04月14日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

むしろ“よく見えていたからこそ、動かなかった”。

鮮やかなボレーを決めた鎌田(2番)。栗原(4番)をはじめ、横浜の選手たちは意外性のある一撃の前でなにもできなかった。写真:徳原隆元

 J1リーグ1stステージ・5節の横浜×仙台戦。67分の横浜の失点シーンは、ファビオがクリアを相手に当ててしまい、そのこぼれ球を拾ったウイルソンがセンタリングを上げると、中で待つ鎌田次郎がまったくのフリーで鮮やかなボレーシュートを決めたものだった。
 
 すぐにリプレーを確認してみる。得点者の鎌田に対し、目の前にいた横浜のCB栗原勇蔵は"なにもできずにいた"。ボールウォッチャーになり、スーパーゴールの傍観者に――。代表経験のある歴戦のDFにしては、少しがっかりさせられるプレーだった。
 
 ミックスゾーンでの栗原は、実に冷静だった。「周りの状況を確認しておかなければいけなかった」と反省を口にするが、一切の言い訳はしない。もっとも、話を聞けば、単なる傍観者ではなかったことが分かった。
 
 少なくとも、栗原はボールウォッチャーではなかった。むしろ"よく見えていた"からこそ、動けなかったのではなく"動かなかった"のだ。
 
 第一に、ファビオのクリアミスがあった。裏を狙ったパスに素早く反応したファビオがボールを支配下に収める。栗原はその瞬間、「マイボールになった」と思った。それが油断だったと言えばそうかもしれないが、いずれにせよ、ファビオのクリアが梁勇基に当たって撥ね返ったボールをウイルソンがキープ。栗原は相手の二次攻撃に備える。
 
「カウンターだったし、ラインもバラバラという感じだったから、まずはブロックというか、ゾーンで守ろうと思った」
 
 視界に鎌田が入っていたのは間違いない。「(鎌田がトラップすれば)詰めてもいいし、頭で打ってくればたぶん、入らないくらいの距離」でスタンバイすることにした。

次ページ数秒間のなかで様々な状況を描いて準備する。

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