「相手が新システムを採用した時はがっかりします(笑)」ベルギーで活躍する日本人ビデオアナリストに迫る――【STVVの野望】

2021年02月05日 ワールドサッカーダイジェスト編集部

映像作りで重要なのは要点をシンプルにまとめること

学生時代はプロサッカー選手を目指していたというビデオアナリストの大里康朗氏。将来的には「日本で若い世代のアナリストの育成や普及に携わって、日本サッカー界に貢献したい」という。© STVV

 17年11月に『DMMグループ』が経営権を取得し、現在では6人の日本人選手と多くの日本人スタッフが在籍するベルギー1部のシント=トロイデン(STVV)。

 そんな注目クラブのスタッフに話を聞き、欧州サッカークラブの"リアル"に迫るのが『ワールドサッカーダイジェスト』誌で好評連載中の「STVVの野望」だ。第2回目は、表立って伝えられることが少ない「ビデオアナリストの実情」を大里康朗氏に聞いた。

――ビデオアナリストの仕事内容を教えてください?

 メインとなるのは敵チームの分析です。次の対戦相手のゲームを4~5試合ほどチェックし、試合前のミーティングで流す映像を作ることが最大のミッションです。他にも、ハーフタイムに確認できるように試合の前半をライブで分析したり、試合翌日のミーティングでフィードバックしたりといった業務があります。

――そういった映像を使って、大里さんご自身が選手に説明するのですか?

 いまのチームに関して言えば、基本的にミーティングは監督主導で行なわれています。なので、事前に監督に映像の意図を説明するのが役割です。

――映像作りでとくに気をつけている点は?

「相手の特徴」や「自分たちがどうプレーすべきか」という肝になる部分を、なるべくシンプルにまとめることです。情報を詰め込みすぎても良くありません。時間が長くなると選手も飽きてしまいます。基本的には10分以内に収めるように意識しています。
――監督によって求める映像に違いがあると思いますが。

 そうですね。戦術に加えて、相手選手のキーマンにフォーカスした映像を求める監督もいれば、チーム戦術のポイントだけで構わないという監督もいます。

――ビデオの制作期間はどれくらいですか?

 通常は4~5日かかります。ただ、試合がミッドウィークにも開催される場合は、当然、制作期間も短くなります。

――編集はどのようにして学びましたか?

 少しだけですが、ドイツのケルン体育大学で。当時はウィンドウズのパソコンでした。現地の「プロゾーン」というソフトウェアを使っていたので、また一から学び直した感じです。

――映像制作にかなり時間がかかるとのことなので、普段は部屋に篭って作業をする
ことが多いのですか?


 スケジュールがタイトな時は、そういう場合もありますね。ただ、できる限り練習場に顔を出して、どんなトレーニングをして、監督がどういう指示を出しているのかをチェックしています。もちろん、時間が許せば対戦相手の試合を観にいくこともあります。

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