暴徒化したマルセイユのファン250人が乱入…前代未聞の襲撃事件は、なぜ起きたのか?【現地発】

2021年01月31日 サッカーダイジェストWeb編集部

発煙筒を手にした約250人のサポーター押し寄せる

熱狂的で知られるマルセイユのサポーター。その一部が暴徒化した今回の襲撃事件は、なぜ起こったのか? (C)Getty Images

 現地時間1月30日、日本代表DF酒井宏樹と長友佑都が所属するマルセイユで、激怒したサポーターがクラブ本部兼トレーニング場「ラ・コマンドリー」に乱入。DFアルバロ・ゴンサレスの背中に投下物が当たる事態となった。

 これを受け、同日夜に予定されていたマルセイユ対レンヌ戦も急きょ延期に。サポーターの「反乱」は珍しくないが、それによって試合が延期になるのは今回が初めてだ。

"予兆"はあった。サポーターたちの怒りは、しばらく前から高まる一方だったからだ。

 少し前、ジャック=アンリ・エロー会長がビデオで、クラブを批判した。「ほとんどのクラブ職員がマルセイユ出身なのは大問題。負けるとみんなガックリしてしまう。これはモダンな企業にはあってはならない」「『OMTV』なんかもひどいテレビで、19世紀の代物だった」と語り、クラブ内部も含め、多方面から驚愕と怒りが噴出していた。

 ちなみにこの発言には、マルセイユのファン以外も目が点になった。リールOBのリュドビック・オブラニャックですら、「いくらバリバリの実業家出身でも、マルセイユの歴史も誇りも無視するような会長では絶対にうまくいくはずがない!」とコメントしたほどだ。
 
 チーム内もゴタゴタが絶えなくなっていた。

 昨シーズンに大活躍したFWディミトリ・パイエは精彩を欠き、ケガから復帰したフロリアン・トバンにエースの座を奪われた。アンドレ・ヴィラス・ボアス監督もパイエをベンチに置いてトバンを重用し続け、これでフランス代表FWの不満が爆発してしまった。

 数日前、パイエがトバンを「自分のスタッツばかり考えている」と非難。驚いたトバンはすぐには応じなかったが、怒りが収まらず抗戦。「彼はコロナ禍を理由にした選手給与値下げに反対する先鋒だったのに、突然寝返って値下げに応じ、見返りに引退後のクラブ就職を勝ち取った」と批判するに至ったという。

 パイエの行動には多くの選手が驚き、一種「裏切り」の臭いも漂ったうえ、「生涯マルセイエ(マルセイユ人の意味)」と誇ってみせた33歳のベテランは、ジェラシーも買うことになった。加えて本人も、将来が安定したせいかぶくぶくと太り始め、ハングリー精神からはほど遠い変貌を遂げた。これがきっかけで、監督と選手たちの絆も、ぎくしゃくし始めた。

【動画】真っ赤に燃える発煙筒を持ったサポーターが集団でクラブハウスに押し寄せる―――戦慄の光景はこちら

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