「サカイ、流暢」酒井宏樹のフランス語会見に、記者団から送られた“励まし”の拍手! その様子が現地ファンの感動を呼んだワケ【現地発】

2021年01月26日 結城麻里

フランス語能力を疑う声に、毅然とした態度で応えた

酒井がフランス語で記者会見に臨んだ姿が、現地で称賛されている。(C)Getty Images

 そのコメントは現地時間1月23日夜、モナコ対マルセイユ戦(3-1)の真っただ中にテレビから流れてきた。

「ヒロキ・サカイがフランス語で記者会見しましたね。しかもジャーナリストたちが拍手をしましたよ」

 この日の中継局『CANAL+』で解説を担当していた元フランス代表、エリック・カリエールのコメントだった。その声にはリスペクトが籠っていた。

 フランス人ジャーナリストが記者会見で拍手することなど、まずない。フランス人とフランス・メディアは、おそらく、どこの国より批判精神が旺盛だからだ。それは民主主義とジャーナリズムの健全さを示してもいるとも思う。

 私が、記者会見でフランス人ジャーナリストたちが拍手するのを見たのは、何十年もフランス代表広報長を務めあげたフィリップ・トゥルノン氏が、2018年ワールドカップ優勝を置き土産に引退し、ロシアでキャリア最後の記者会見を仕切ったときの中継ぐらいである。
 
 それが、ローカルレベルとはいえ、日本人の酒井宏樹に拍手が送られたのだ。フランス語を披露したのは導入部だけだったが、フランスの言葉を語り始めた酒井に、現地のジャーナリストたちは、励ましの拍手を送ったのである。

「フランス語で喋ります(笑)。僕のフランス語は前よりいいと思います。前よりずっといいと思っています。ただ、記者会見用には"まだ"なんです。僕にはちゃんと答える責任があります。僕とあなた方は、友だちとかお隣さんとかではなく、プロフェッショナルな関係だからです。なので、すみません。ここからはまた日本語で話して、彼が通訳します」

 緊張して照れながらも、笑顔がこぼれていた。

 現地の反応は、「なんだ、ちゃんと話せるじゃん!」であった。ピッチ上でチームメイトと言葉を交わす雰囲気からしても、フランス語で会話ができることは分かっていたが、こんなにきちんと話せるならば、何の遠慮も要らないというもの。日本人だからでもあるだろうが、私にはアンドレ・ヴィラス・ボアス監督のフランス語の発音の方が、わかりにくいほどだ。
 

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