【提言コラム】代表に定着していない武藤はいまチェルシーに移籍すべきなのか?

2015年04月07日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

ビッグクラブへの移籍は必ずしもバラ色の人生ではない。

規律を重んじるモウリーニョ監督のもとで常時試合に出続けるには、高い戦術理解力も要求される。チェルシーへの移籍が実現しても、その後の行く末は楽観視できない。(C) Getty Images , SOCCER DIGEST

 チェルシーへの移籍報道があったからだろう。4月6日の小平グランド(FC東京の練習場)は、報道陣で賑わっていた。
 
 しかし、お目当ての武藤は2日前の甲府戦(J1・4節/結果は1-0でFC東京の勝利)で首と肩を負傷していた影響もあり、身体のケアを優先して練習後の囲み取材には応じなかった。
 
 FC東京のクラブ関係者は「なにも聞いていない」という武藤のチェルシー移籍が、果たして今夏に成立するかは現時点で分からない。たとえ本人に訊いたとしても、それに関してはなにもコメントしないだろう。
 
 ガセか、真実か。それは時間が経てばいずれ分かること。こうした移籍話が出て、なにより気になるのは「このタイミングで武藤はビッグクラブに移籍すべきか」という点だ。
 
 確かに昨季はプロ1年目ながらJ1で新人最多タイの13ゴール。ベストイレブンに選ばれ、今年1月にはハビエル・アギーレ監督の"秘蔵っ子"としてアジアカップにも参戦した。
 
 アタッカーとしてのポテンシャルは一級品で、プロになってわずか1年足らずでそれなりの実績も作ったが、武藤は現時点でチェルシーに相応しいタレントとはどうしても思えない。
 
 ビッグクラブに移籍すれば、バラ色の人生が待っているわけではない。それは、宮市亮のここまでのキャリアが証明している。
 
 2011年に19歳の若さでアーセナルに正式加入するも、蓋を開けてみたらレンタル生活の繰り返し。ボルトン時代に19歳と1か月28日でプレミアデビューを果たしたとはいえ、大きな怪我もあり期待を裏切っている感が否めない。
 
 ドイツからの出戻りとはいえ同世代の宇佐美貴史、あるいは柴崎岳がJリーグで確実な成長を遂げ、日本代表でも存在感を増していく一方、宮市は"影の薄い欧州組"になりつつある。日本代表で確固たる地位を築けていない武藤が、この夏にチェルシーに移籍したとしても、あの分厚い選手層を突き破りピッチに立ち続けなければ、やはり"影の薄い欧州組"となる可能性は高い。

次ページ武藤にとっても、FC東京にとっても幸せな選択を望む。

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