マンUをCLから蹴落とした RBライプツィヒ。33歳の指揮官ナーゲルスマンの冴えわたる戦術と成長戦略を読み解く【現地発】

2020年12月12日 中野吉之伴

ユナイテッドとの大一番に備え、バイエルン戦で “余力を残す”

RBライプツィヒを率いるのが、33歳の若き智将ナーゲルスマンだ。 (C)Getty Images

 33歳のユリアン・ナーゲルスマン監督率いるRBライプツィヒが、王者にあと少しで土をつけるところまで追い込んだ事実は、ドイツのサッカーファンに新たな驚きと期待感をもたらしている。

 ブンデスリーガ第10節でバイエルンと対戦したライプツィヒは、終始リードを奪う展開に持ち込みながら、最終的にはバイエルンのトーマス・ミュラーとキングスレー・コマンの活躍で、3-3の引き分けに終わった。

 だが、注目すべきは、試合後のナーゲルスマン監督の"余力を残した"とも捉えられる発言だった。

「スリリングな試合だった。引き分けは順当な結果だと思う。火曜日のチャンピオンズ・リーグ(CL)の試合を考慮して、何人かの選手を60分以降交代で下げざるをえなかった。そのため本来のポジションではないところで起用しなければならないこともあり、それが失点につながってしまったのは残念だが。それでも、最後はしっかり耐えきることができた」

 確かにCLの決勝トーナメント進出を確定していない状況で、負けることが許されないマンチェスター・ユナイテッドとの試合がもつ意味はとても大きい。だが、ブンデスリーガで首位争いをしているチームが、バイエルンとの試合でメンバーを入れ替え、そのうえで、負けずに引き分けで終えるというのは、過去あまり類を見ない話だ。
 
 今シーズンのライプツィヒは、昨シーズンまでエースストライカーとして活躍していたドイツ代表FWティモ・ヴェルナーがプレミアリーグのチェルシーへと移籍。シーズン25得点を挙げている選手の穴を簡単に埋めることはできないと思われた。

 だが、ナーゲルスマンはこれを逆にチャンスと捉えた。より柔軟性に富み、さまざまな選手の組み合わせでバリエーションを作り出し、いろんなフォーメーションと戦い方で攻略していくチーム作りだ。そして今、ひとりの得点源に頼るのではなく、どこからでもゴールが取れるサッカーを体現している。

 チーム内得点王が左SBアンヘリーニョ(4得点)というのは特筆すべきことだろう。ボールを収める選手の動きに呼応し、周囲の選手があらゆるところからスペースへと顔を出していくわけだが、すべてがパターン化されているというわけではない。プレー原則における共通認識がはっきりしているので、試合状況とゲームプランに合わせて選手が最適な選択肢をかみ合わせていくのだ。

次ページユナイテッドの守備網はズタズタにされた

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事