「正直、ホンダにはがっかりした」本田圭佑の“退団示唆投稿”にブラジル人記者が苦言「沈みかかった船から船長が逃げ出すのか」【現地発】

2020年12月01日 リカルド・セティオン

ボタフォゴは歴史的な苦境にある

本田のツイッター投稿がブラジルで物議を醸している。 (C) Getty Images

 私が日本の雑誌や新聞に記事を書くようになってから20年以上が経つ。その間何度も日本に行ったし、そのサッカーの著しい成長を目の当たりにもしてきた。だから本田圭佑がボタフォゴに来ると知った時、私はとても嬉しかった。ついに日本の選手がブラジルのトップチームでプレーする日が来たと――。

 しかし11月28日、本田のツイッター投稿に、正直がっかりしてしまった。

「数日中に納得できるような説明をしてくれなければ、僕はチームを去ることも視野に入れるだろう」

 ボタフォゴはいま、その長い歴史の中でも最も危機的状況にある。順位は下から2番目、勝ち試合の数は3と20チーム中最も少なく(最下位のゴイアスと同数だが、ゴイアスは1試合少ない)、監督は次々と変わり、結果を出せないチームにサポーターは激怒している。

 財政的にも苦しく、選手への支払いも遅れている。まさに沈みかかった船である。そしてキャプテンでもあり、チームで最も経験豊かな本田はこの船の船長だ。その船長が真っ先に船を見捨てようとするのか?

 たしかに現在のボタフォゴの運営は最悪だ。本田の言っていることはいちいちもっともだ。誰もその内容には反論しない。問題はそれをこう言う形で吐露してしまったことだ。わざわざSNSで発信する必要があったのだろうか。

 いろいろ不満もあろうが、それをぶちまけてみても、チームはより混乱するばかりである。彼を手本にしてきた若手選手たちはどう思うか。ここはぐっと我慢し仲間を鼓舞するような言葉を投げかけるのが真のキャプテンというものではないだろうか。

「セリエAに残るためこの後のすべての試合に勝とう」
「決してあきらめず最後の最後まで戦おう」

 皆が期待していたのはそんな言葉だったはずだ。

【動画】ファン熱狂! 本田圭佑がブラジル全国選手権で決めた鮮やかなゴラッソはこちら
 この1月、ボタフォゴのサポーターは本田を英雄として迎えた。しかしそれから9か月経つが、本田はまだピッチでは何もしていない。キャプテンとして低迷するチームを救うような活躍を見せたわけではない。にもかかわらず、「チームは自分を納得させるべき」というのは、あまりに自分本位ではないだろうか。

 どんなスター選手だってそんなことは言わない。ズラタン・イブラヒモビッチなら言うかもしれないが、彼はそれだけのことはピッチでやって見せている。

 何か問題があったら、さっさと逃げ出しなさい。日本の英雄が、子供たちにそう教えるのか?

「日本人というのは、なにか問題があってもぐっと我慢し、外に苦しい顔を見せず、黙々と解決に向け頑張る国民なのかと思っていたよ」

 私のある友人はがっかりしたように話していた。そう感じたのは彼一人だけではないだろう。日本好きの私はそれが残念でたまらない。本田は自分がブラジルでの日本の"顔"であることも忘れないでほしい。

次ページ「身体はリオにあっても、頭は日本にあるような錯覚を覚える」

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事