“流れの中から初得点”より注目されたメッシの「スルー」。批判を浴びる現状を象徴するシーンだった【現地発】

2020年11月15日 エル・パイス紙

これまでメッシが見せてきたレパートリーにはなかった

9節のベティス戦でようやくPK以外での今シーズン初得点を決めたメッシ。(C)Getty Images

 リオネル・メッシは何もしなくても、注目されるプレーヤーだ。11月7日のベティス戦で、元チームメイトのクラウディオ・ブラーボ相手に決めた"無ゴール"は、現在"10番"が直面している状況を象徴しているようでもあった。

 このアントワーヌ・グリエーズマンの得点をお膳立てしたプレーがここまで見事に決まったのは、メッシとジョルディ・アルバの強力コネクションが関わっていたからでもある。事実、メッシの対角線パスを起点に、ジョルディ・アルバがサイドをえぐってゴール前にクロスを送り、走り込んできたメッシが合わせるという2人よるシンクロされたプレーからバルサは近年、ゴールを量産してきた。

 それは相手にとって分かっていても止められないプレーであり続けた。当然この場面も、ベティスの守備陣はジョルディ・アルバがグラウンダーのクロスを入れた瞬間、シュートを警戒した。しかしメッシは軽くジャンプしながらボールに触らないスルーというプレーを選択した。

 対峙していたマルク・バルトラは完全に裏を突かれ、ボールが通り抜けた先にいたアントワーヌ・グリエーズマンは無人のゴールに蹴り込むだけでよかった。咄嗟の判断で一瞬 "透明化"することで相手の守備陣を粉砕したこのプレーは、これまでメッシが見せてきたレパートリーにはなかったものだ。

【動画】2ゴールよりも話題となったメッシの絶妙スルーはこちら
 メッシはデビュー以来、無数のゴールを積み重ね、サッカー界の最高峰に君臨し続けてきた。このベティス戦でも、PKを含めて2得点を挙げた。

 ただこの一戦を迎えるまで今シーズン、記録したゴールはいずれもPKで、流れの中でネットを揺らしたのは昨シーズンのチャンピオンズ・リーグのナポリ戦(ラウンド・オブ16の第2レグ)以来だった。

 しかも夏に巻き起こした去就騒動を境に、取り巻く環境が変化し、周囲からの風当たりも強くなっていた。ここ最近は走行距離の少なさ、ボールロストの数、敗北後に見せる苛立った表情など、その一挙手一投足に揚げ足を取ることで、得点ペースが落ちた原因を探ることが一種の流行のようにもなっていた。ベティス戦での活躍で風向きが少しは変わるだろうが、特筆すべきは2つのゴールよりもむしろ、スルーのほうが人々の印象に残ったことだ。

【動画】主審の前でボールを蹴り飛ばし…目を疑うようなメッシの"威嚇行為"はこちら

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