ボランチが「ゲームチェンジャ―」として流れを変えた凄さ。遠藤航を見ていて思い出すのは152試合出場の名手

2020年11月14日 佐藤俊

得意なプレーは「鬼の縦パス」

途中出場で試合の流れを変えた遠藤。(C) Getty Images

 試合の流れを変えるのは難しい。サッカーの試合では、よく言われることだ。

 特に相手の流れになっている時、「ゲームチェンジャ―」として途中出場し、流れを変える役割を期待されるのは前線の選手だが、そういう選手でも思い切って自分の特徴を出さないと変化を生み出すのは容易ではない。

 それが中盤、ボランチでは、さらに仕事が難しくなる。日本代表の国際Aマッチ152試合の最多出場を誇る遠藤保仁は、「試合の流れを自分が入って劇的に変えるのは、いうほど簡単じゃない。前線の選手はともかく、俺のようなボランチの選手は何かひとつ違いをみんなに見せて、徐々に流れを変えていくしかない」と語っていた。遠藤は自らにボールを集め、パスを左右に振り分けていくことでリズムを取り戻していった。

 パナマ戦、その流れを変える仕事をやってのけたのが、遠藤航だった。

 遠藤がピッチに入って、まずプレーで見せたのは球際の厳しさだった。相手に負けない気持ち、戦う気持ちを球際の厳しさで見せ、周囲の選手にそれを伝播させていった。なんとなく守備していた日本の選手だが、ひとつやるべきことが遠藤のメッセージによって明確になり、続けていくと守備が落ち着き、それが攻撃にもいい影響を与えるようになった。

 61分、南野拓実のPKによるゴールは、遠藤が狙っていた縦パスから生まれた。植田直通からボールをもらった瞬間、素早い判断で久保健英に縦パスを出し、その久保からのパスに反応した南野がボックス内で倒され、PKに繋がった。

「前半、上から(スタンド)見ていて前につけられるチャンスがあるなって思っていた。拓実(南野)のところ、2シャドーのところが空いているなと思っていたし、いいポジショニングとタケ(久保)がうまく間に入ってきたのでシンプルにつけた」(遠藤)

 久保が間に入ってくるタイミングとパスを出したタイミングが絶妙だったが、それは遠藤の判断の早さ、良さに尽きるだろう。リオ五輪代表の時、ボランチのポジションに入り、「鬼の縦パス」と言われる強く、精度の高い縦パスを前線にバシバシ配給していた。「それが自分の得意なプレーのひとつ」と語った遠藤は、今もその縦パスを磨き、その武器を披露した。
 

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