「しょうがない」に込められた、内田篤人のやりきれなさ

2015年03月11日 寺野典子

もう、ごまかしきれないところまで来ていた。

敵地でのR・マドリーとの第2戦は途中出場に。わずか10分のプレーで今季のCLの舞台を去った。(C)Getty Images

 チャンピオンズ・リーグ(以下CL)の試合後、内田篤人は敗退した後でも饒舌に語る。
 
 それは3月10日のCL決勝トーナメント1回戦、レアル・マドリー戦でも同様だった。彼は25分間も、報道陣の取材に対応したのだ。
 
 しかし、この日内田が話した内容は、これまでの試合後とはまったく違った。81分からのわずか10分間の出場に止まった理由が、話の主なテーマとなったからだ。

【随時更新】内田篤人のブンデス戦記――14-15シーズン[第8節~]
 
「日曜日の練習後に監督と話をした。『コンディションは100パーセントか?』と訊かれたから、『100じゃない』と答えた。自分でもどうしようかと迷ったけど、もうごまかしきれないところにまで来ていたから」
 
 昨夏のブラジル・ワールドカップ後に発覚した右の膝蓋腱の炎症。もともとは昨年2月に右太ももを痛めたことで、膝に悪影響が出たものだ。結局2014-15シーズンの開幕には間に合わず、9月下旬に復帰。その後は出場を続けたが状態は思わしくなく、今年1月のアジアカップのメンバーに招集されるも、辞退して休養に努めた。
 
 ウインターブレイク明け後のブンデスリーガでも試合出場を続けたが、右ひざのテーピングは欠かせない状況だった。2月21日には左太ももを痛めて欠場。続くドルトムント戦にフル出場も、3月7日のホッフェンハイム戦はベンチスタート。だが、35分から途中出場している。
 
 その試合の翌日に、監督との話し合いが行なわれた。
 
「練習後、座っていたら監督が来て、『最近あんまり走れていないな』って言われた。監督がスタッフに『内田は足を引きずっているようだけど、問題はないのか?』って訊いているのも見ていたしね」
 
 もう隠し切れないと悟ったのだろう。
 
「俺は『100じゃないけど(今季は)あと2か月だからなんとかする』と言ったけど、監督は『2か月は長いんだぞ』って。確かに残り10試合あるのかって考えると、大変だなという気持ちもある。痛みはもうしょうがないけど、動かなくなってくるのは困る」
 

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