【名古屋】リーグ最少失点を誇っていたチームがまさかの公式戦2戦連続で3失点…今何が必要なのか?

2020年09月06日 今井雄一朗

ザーゴ監督がひと言でこの試合の勝敗を大きく分ける要因を語る

鹿島戦で公式戦2戦続けて3失点で敗戦となった名古屋。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

[J1リーグ14節]名古屋1-3鹿島/9月5日(土)/豊田スタジアム

 名古屋にしてみれば、やりたいこと、やるべきことの全てで相手に上手をいかれたような試合だった。

【動画】雷雨による中断、まさかの3失点…名古屋対鹿島戦のハイライト!

 雷雨による1時間もの試合中断が流れに影響したところはもちろんあるが、その1時間の使い方でも鹿島は狡猾で抜け目なく、また試合巧者であったと言えるだろう。

「中断した後の入りは決して悪くなかったが、最初の明確な相手のチャンスで失点してしまった」とフィッカデンティ監督は苦虫を嚙み潰したような表情で語ったが、対するザーゴ監督はこう言っている。

「中断中に相手が何を狙っているのか、こちらが何をすべきなのかは整理できていた」そして、さらなるザーゴ監督のひと言がこの試合の勝敗を大きく分ける要因となった。

「よくあることだが、中断すると再開のところで集中力を欠いたり、不注意で失点する。それを絶対にしないようにということを意識してもらった」

 和泉竜司の古巣相手の先制点は鹿島の最初の決定機であり、1本目のシュートだった。それが米本拓司のクリアミスを相手に拾われ、フィフティ・フィフティのボールを丸山祐市がすんでのところで土居聖真にかっさらわれ、エヴェラウドのシュートモーションにランゲラックが引き出され、中央で2名をフリーにした上での失点とあらば、これはもう"不注意"以外の何物でもない。
 
 2失点目も、3失点目も、どこかエアポケットに入ったような隙を見せたところを仕留められている。「3失点したらキツい。もっと得点は取りたかったけど、堅くゲームを進めていくのが自分たちの勝ち方だったので、そこは大いに反省するべきところ」とは稲垣祥の言だが、これがまさに敗因であり、鹿島が掴んだ勝利の道筋だった。決定機をものにし、あくまで激しく堅実に展開を勝利へ進めていく。

 名古屋には不運も重なった。試合の入り自体は名古屋が先手を取っていた上に、中断によるインターバルが影響したか、失点時に全力疾走で自陣に戻った前田直輝が左太ももの付け根を痛めて19分で負傷退場。相馬勇紀が代役には立てられたが、今後を考えれば前田の離脱は大きな痛手だ。

 さらにはガブリエル・シャビエルが「あれは絶対にPKだ」と憤慨する微妙な判定などもあり、チームにはイライラも募っていた。競り合いやハードタックルで中谷進之介、成瀬竣平が転倒する場面など、泣きっ面に蜂の状況にもチームのクオリティは削られていた。

 ただし、それが敗因に数えられるわけではない。鹿島はまさしく試合巧者だった。雷雨による中断を味方につけ、確実にチャンスをものにし、後半開始早々に1点を返されても焦らず加点で試合を決定づけた。鹿島の伝統とも言える相手サイドバック裏のスペースの活用は、激しく出足の速いプレッシングの併用で威力を増し、2点目、3点目の呼び水ともなった。守ってはレオ・シルバと三竿健斗のボランチが攻守において中盤をコントロールし、名古屋の攻撃に歯止めをかけた。
 

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