バルサの新監督クーマンとはどんな指揮官なのか? これまでのキャリアから読み解く【現地発】

2020年08月25日 エル・パイス紙

純粋なバルサスタイルの原理主義者ではない

OBのクーマン(右)を招聘したバルトメウ会長の判断が吉と出るか。(C) Getty Images

 新生バルセロナがロナルド・クーマンとともに歩みを始めた。現役時代から強気の性格で知られ、監督としても厳格なイメージが強いが、同時に周囲の人間に想像力と冒険心を掻き立てる愛嬌の持ち主でもある。「ティンティン」という愛称もそうした人間的魅力から来ている。

 さらにクーマンといえば、クラブ史上初の欧州制覇(1991-92シーズンのチャンピオンズカップ、チャンピオンズ・リーグの前身)をもたらしたゴールを決めたウェンブリーの英雄である。

 ジョゼップ・マリア・バルトメウ政権下でのバルサは年々、当時の指揮官ヨハン・クライフによって確立されたサッカースタイルを軽視する傾向が強まっていたが、窮地に陥った同会長はそのドリームチームのシンボルのひとりにチームの再建を託したわけだ。ただクライフの愛弟子といっても、クーマンは純粋なバルサスタイルの原理主義者ではないし、時と場合によっては実用的な手段を使うことも躊躇することはない。むしろそうした振り幅の大きさが彼の特徴といえる。
 
 キャリアは豊富でこれまでフィテッセ、アヤックス、PSV、AZ、フェイエノールト、ベンフィカ、バレンシア、サウサンプトン、エバートン、オランダ代表の監督を歴任した。この中でもっとも目立った功績をあげたのが直近のオランダ代表で、現在のバルサそうであるように就任当初様々なゴタゴタを抱えていたチームを持ち前の厳格な指導で立て直した。

 英国の経済紙『ファイナンシャル・タイムズ』の著名なコラムニストで、オランダ・サッカーのエキスパートでもあるサイモン・クーパーはクーマンについてこう綴っている。

「ジョゼップ・グアルディオラのように特定のスタイルに拘ることもないし、クライフのように超攻撃的なサッカーを掲げる理想主義者でもない。戦術を選手の特徴にアジャストし、勝利のためには守備的な戦いをすることも厭わない。人的リソースを活用する手腕に優れている。

 人間的にはパーソナリティーが強く、天性の威厳にも溢れる。だから自分の言葉で選手たちに思いを伝えることができるし、ヒステリックになりがちな周囲の声に左右されることもない」

 クーマンに期待されるのはまさにその強力なリーダーシップだ。テクニカル・ディレクターを務めていたエリック・アビダルの退団によって権限はさらに強まるはずで、当然補強についても発言権が増すだろう。

 今後の焦点は、ルイス・スアレス、サミュエル・ウンティティ、イバン・ラキティッチ、アルトゥーロ・ビダル、セルヒオ・ブスケッツ、ジョルディ・アルバらバルトメウ会長が公表した移籍不可リストに含まれなかった主力選手たちの処遇、そして去就に揺れるメッシの慰留だ。

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