【識者コラム】いよいよJ開幕――2ステージ制不要論を巻き起こす「真の王者」の誕生に期待

2015年03月02日 加部 究

でき上がった商品を集めてくる浦和がやるべきこと。

良質な選手を多数揃える浦和だが、他チームを大きく引き離すほどの戦力ではない。(C) SOCCER DIGEST

 J1はシーズンを重ねるごとに、優勝と残留、ふたつの争いの境目が、ますます判りにくくなっている。昨年の徳島に象徴されるように新参者にとってハードルは高いのだが、逆にG大阪、柏、広島などが証明したように降格したブランクは、あまり大きなハンデにはならない。結局昨年はG大阪の三冠で幕を閉じたが、ワールドカップ前までは再降格が心配になるような成績で低迷していた。
 
 一方で磐田、C大阪、千葉などJ1で十分な経験値を持つクラブが残っていることを考えれば、むしろJ2はレベルアップしている。つまり裾野は広がり底上げされたが、牽引車が現われずに頂点が頭打ち。Jリーグはそんな様相を呈している。
 
 実力が紙一重である以上、結果を大きく左右するのはコンディションだ。端的に言えば、ACLと日本代表に集中を妨げられないチームが優位に立つ。もっともACLや日本代表の影響は限定的だ。
 
 例えば、一昨年は広島が逆転で連覇を遂げたが、もしACLでさらに勝ち進んでいたら難しかったかもしれない。また昨年のG大阪も、ワールドカップを終えると、いったん遠藤保仁と今野泰幸が代表から外れ、それを契機に快進撃へと転じた。宇佐美貴史の代表招集を望む声は高いし、もちろんパトリックは代表には無縁だがリーグ内では屈指の決定力を誇る。
 
 こうして代表に肉薄する実力を備えながら、招集はされない選手を揃えたクラブが結果を手にしやすい。
 
 2位の浦和などは、幸か不幸か、ふたつの条件を完璧に備えていた。一昨年はわずかの差でACLの出場権を逃した。一方で大半の選手が日本代表歴を持つのに、昨年実際に招集されたのはGK西川周作だけだった。
 
 対照的なのがFC東京である。コンスタントに最多の代表選手を送り出し、いつ優勝してもおかしくはない戦力を揃えているのに、誰が監督を務めても肝心な試合で勝負弱さを露呈する。
 
 浦和のミハイロ・ペトロヴィッチ監督は「ウチはレアルではない」と繰り返す。確かにクラブの経営方針が先立つので現場は忸怩たる思いを抱いているのかもしれないが、浦和のようにサッカー熱に溢れる街を本拠にして高い潜在的集客力を持つクラブが日本のレアルになる野望を抱かない限り、Jは変わらない。
 
 もしかすると、今年の浦和はレアルのように豪華な補強をしたと自賛しているのかもしれない。確かに一見ターンオーバーも可能な良質の選手を集め、層を厚くした印象はある。
 
 だがそれなりに実績を備えても、文句なしに昨年までのレギュラーを弾き飛ばすような選手はいない。もちろん競争力を高める補強が功を奏す可能性も否定はしないが、裏返せば誰が演奏してもあまり音色が変わらないオーケストラになりかねない。
 
 フォルカー・フィンケ元監督が去り、浦和は完全にでき上がった商品を集めて来るだけのチームになった。それでトップに立とうとするなら、レアルがハメス・ロドリゲスやトニ・クロースを買ってきたように旬な最高級品にチャレンジしなければ、6万人を超えるスタジアムに相応しいもてなしとは言えない。

次ページ世界基準から外れたキャンペーンは強化の王道から外れる危険性も。

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